防災基礎講座:基礎知識編-自然災害をどのように防ぐか-
図17.4 東京における火災旋風 (震災予防調査会,1925に基づき作成)
被服廠跡は,隅田川に面する広壮な邸宅に隣接した面積7haほどの土地で,陸軍から払い下げられグランドや小学校にする予定で空き地になっていました.ここにおよそ4万の人々が多量の家財とともに密集状態で集まっていました.火災旋風が発生した16時には火災域にほぼ取り囲まれ,唯一開いていた南西方向からは隅田川沿いにやや強い風が吹き込んでいました.このような状況下で最大風速70m/秒と推定される旋風がこの空き地を襲い,熱風や一酸化炭素などにより,あるいは烈風に吹き飛ばされて,3.8万人の死者(周辺域を含む)がでました.これは東京市全体の死者の55%にあたります.関東地震時に東京において発生した火災旋風の総数はおよそ110でした(下の図).地形や地物との関係はほとんど認められません.
震災予防調査会(1925):震災予防調査会報告第百号戊.
客員研究員 水谷武司