防災基礎講座:基礎知識編-自然災害をどのように防ぐか-
図1.6 東京における利根川洪水の進行 (科学技術庁資源局,1961などに基づき作成)
県境のある大場川の先において江戸川堤防に接続し低地を締め切っている桜堤は,洪水を約9時間支えました.しかし,米軍による江戸川堤防爆破による緊急排水は成功せず,18日2時に破堤しました.南下した氾濫水は常磐線ついで総武線の路盤を越えて2日後に荒川河口近くの新川堤に達して停止しました.西へ向かった流れは中川堤防を破壊して綾瀬川までの範囲を水没させました.この浸水域の西側半分(荒川寄り)は海面下の土地で湛水期間は半月を超えました.浸水家屋の大半は床上浸水でした.東京都(足立・葛飾・江戸川の3区)における浸水家屋は床上82,931戸,床下22,551戸で,埼玉県における浸水家屋40,040戸を大きく上回りました.このように利根川の洪水が東京(江戸)にまで到達するということは,江戸時代以降たびたび起こっています.
客員研究員 水谷武司