防災基礎講座:基礎知識編-自然災害をどのように防ぐか-
図1.2 関東平野の地形
関東平野は中央が窪む盆状の沈降を行っています.その沈降量は最近200万年で1,000mを超えています.平野内には,10数万年前の三角州や浅い内湾の海底堆積面を起源とする台地(下末吉面)が広く分布しています.当時の湾は東に向け開いていたので,この台地面は形成時には緩く東に傾斜していたのですが,その後の盆状沈降により平野の中央部では低地面との高度差がほとんどない高さになっています.この台地面高度から推定される沈降の中心は,破堤地点のすぐ南の幸手・栗橋付近にあります.沈降の中心は東京湾にもあり,これらをつなぐ細長い地域で大きな沈降を示しています.利根川はこの沈降の軸に沿って流路をとるのが最も自然な状態です.1947年の氾濫流だけでなく,江戸時代から昭和にかけて何度も起こった利根川大洪水は,この方向をたどって江戸や東京に流入しました.
客員研究員 水谷武司