2009年フィリピン台風災害調査速報
このページでは、2009年9月26日から10月初旬にかけてフィリピン、ルソン島を襲った台風オンドイ及びペペンの被害調査報告を掲載しています。本調査は、防災研究フォーラム『突発災害調査』として行われたものです。
9.ルソン島北部の地すべり被害
1.地すべり災害の概要と豪雨状況
ルソン島北部のベンゲット州では台風ペペンがもたらした豪雨によって各所で地すべり・土砂崩れが発生し、多数の人的被害を生じた.そのなかでも、被害が最大規模のものが、85名の死者(2009年10月11日)を出したベンゲット州ラ・トリニダード リトルキブンガンにおける大規模な地すべりであった。バギオ市周辺とベンゲット州における土砂災害調査は11月27日に実施した。市長への聞き取り調査のあと5ヶ所ほど土砂災害の被災状況に関する現地調査を実施した。
台風17号(フィリピン名ペペン)がもたらした豪雨は、この台風の上陸と再上陸を繰り返した複雑な動きによって大きく2つのピークからなる。最初の豪雨はバギオ市では10月3日に531mmを記録している。その後2日おいて、6日から8日までの3日間に、260mm、276mm,685mmと合わせて1200mmを超える記録的な豪雨となった。バギオで土砂災害が起きた時刻は少しばらついてはいるが、おおよそ8日の午前中に集中している傾向がある。
2.地すべりの発生状況と被害
短時間の調査しか出来なかったので、詳細は現地で収集した報告書などの資料を基にまとめた。最大の被害を生じたのはベンゲット州ラ・トリニダード リトルキブンガンで発生した地すべり災害である。この地すべりはバギオ市からベンゲット州の州庁舎に向かう道沿いで発生した。地すべり土砂は道路を横切って直下の谷を流入し、谷沿いに流下し、途中にあった集落を襲って、死者85名の被害をだす惨事に至った。地すべりが発生した場所は尾根の直下の斜面下を通過する道路の法面とその背後の斜面である。地すべりが生じた範囲は幅約30m、高さ約20mのかなり急な斜面で、地すべり斜面の右側方崖は斜面を横切っていた断層面となっている(写真1、2)。地すべりが生じた斜面の上は尾根に近いかなり平坦な地形である。この上に降った雨が断層面に沿って浸透した可能性も指摘される。
写真1 トリニダードで発生した地すべりの発生域
写真2 トリニダードで発生した地すべりの流下状況と被災域
バギオ市内でも小規模ではあるが各所で地すべり・土砂崩れが発生し、多くの死傷者を出している。現地調査を実施したいくつかは道路の路肩直下の急斜面が崩れたもので、直下の斜面に立地していた家に土砂が流入して被害が生じた(写真3)。後述するようにバギオ市では人口が集中したため急な斜面にも住宅が密集して建てられていることが被害拡大の要因になっていることが指摘できる。
調査した道路路肩直下の土砂崩れは道路が尾根部に位置しており、集水面積がほとんどないところで発生している。このため発生原因として道路脇に設けられていた排水管からの漏水した可能性も考えられるが(写真4)、充分な調査が出来なかったため、断定は難しい。
写真3 道路下の急斜面で起きた土砂崩れ
(Crescencia Village)
写真4 崩れた斜面の上を通る道路の路肩には排水管が設置されていた。
(at Kitma in Marcos Highway)