十勝岳の山麓には火砕流のつくった丘陵が広がり,放射状の谷により開析されています.泥流および規模の大きくない火砕流は,平滑な火山山腹では広がるものの,流下するにつれ谷底に収斂して流れ下ります.谷は放射状に伸びるので,山腹部において少し離れた隣の谷に流入すれば,山麓では大きく違った方向に泥流が及ぶことになります.1924年の泥流がすぐ隣のヌッカクシ富良野川にも流入していたならば,上富良野市街は直撃を受けたはずです.噴火が南寄りの火口で生じた場合には,泥流や火砕流はまっすぐ東に向かいます.
客員研究員 水谷武司