防災基礎講座: 災害予測編-自然災害をどのように防ぐか-
図8.9 濃尾平野の地盤と濃尾地震被害
濃尾地震の被害は,断層が生じた根尾谷および濃尾平野に集中しました.濃尾平野は木曽川のつくる平野で,木曽山地から流れ出たところに広い扇状地をつくり,その先に氾濫原ついで三角州を展開させています.山地・丘陵地との間には台地が広く分布します.氾濫原・三角州は軟らかい砂泥の沖積層,扇状地は砂礫層,台地はかなり締まった砂泥層,山地・丘陵は固結岩でそれぞれ構成されます.氾濫原・三角州域の大部分は,住家全壊率が50%以上でした. 下の図は,尾張地方(愛知県)の町村についての住家倒壊率(半壊数の1/2と全壊数との和を全戸数で割った値)と震央距離との関係を地形別に示したものです.震央近くでは非常に強い揺れのため地形(地盤)に関係なく大部分の家が壊れていますが,震央から離れるにつれて,地形による差がはっきりと現れ,硬い地盤からなる地形では倒壊率が急速に小さくなっています.沖積層が厚くて地盤条件の特に悪いところでは,震央から45kmのところでも倒壊率が90%近い町村があります.
客員研究員 水谷武司