防災基礎講座: 災害予測編-自然災害をどのように防ぐか-
図3.19 山地洪水危険度指標
洪水流の強さを単純化して,単位幅流量(=水深×流速)と勾配Sとの積で表されるとし,これを地形および降雨の量で置き換えて危険度指標を求めています.面積Aの流域に強さPの降雨が入力された場合の流量はAPとなり,これが幅Wの谷底低地を流れると単位幅流量はAP/Wで与えられるので,洪水流の強さFは(SA/W)×Pと,地形および降雨の要因で表すことができます. 1946年以降の山地内・山麓の谷底低地で生じた洪水災害について,(SA/W)Kを横軸に(K:1960年以前1.5,以後1.0),最大12時間雨量(P12)を縦軸にとりプロットして,多数家屋(およそ50棟以上)の流失・全壊が生ずる洪水(山地河川洪水)を発生させる限界降雨強度を地形要因の関数として導いたのが上の図です.Kは家屋の強度の時代による差を補正するために加えた係数で,判別分析という統計処理により求めています.大雨の頻度にはかなりの地域差があるので,この限界降雨強度を再現期間(確率降雨)で表現すると,よりよい危険度指標になります.下の図は,谷底に位置する主な都市について,数十棟以上の流失・全壊家屋が生ずるような激しい洪水を引き起こす限界24時間雨量とその再現期間を示したものです.
水谷武司(1991):山地内都市の洪水災害危険度評価.総合都市研究42.
客員研究員 水谷武司