防災基礎講座: 災害予測編-自然災害をどのように防ぐか-
図3.8 氾濫数値計算の方法
対象領域を正方形メッシュに区画し(間隔は一般に50~200m程度),地形図やDEMにより各メッシュの代表地盤高を与えます.堤内地の初期水深は通常0とします.河川メッシュの水位をハイドログラフ(水位-時間曲線)などにより与え,ある任意の微小時間内に破堤口から流入する水量を,水流の運動を表す式や堰の越流量を求める式などにより計算します.次に破堤口に直面するメッシュから隣接3メッシュへ向かう流量を水流の運動を表す式により計算し,さらに隣接メッシュへと計算範囲を順次拡大させていきます.流量を計算する式は基本的には,メッシュ間の水位(地盤高+水深)の差および流れの場の抵抗(粗度係数)によって流出入量が決まるという式です.こうして全境界を流れる流量が決まればつぎに,各メッシュについて流量の出入差を求めこれをメッシュ面積で割って,その時点の水深を得ます.この計算を数秒程度の時間間隔で非常に多数回繰り返すことにより,洪水流の運動の時間的変化を数値的に再現させます.図の空白メッシュは堤防によりあるいは地盤が高いことにより流入の生じないとしたメッシュです.
客員研究員 水谷武司