防災基礎講座: 基礎知識編-自然災害をどのように防ぐか-
1. はじめに
-災害発生のしくみと対応のしかた-
自然災害は,大雨,強風,地震などの自然力 (これを災害誘因と言います) が,いろいろな地形や地盤条件の地表面 (これは土地素因,いわば土地の体質です)に作用することから始まります.これによって発生する災害の種類は,誘因と土地素因との組合せ,とくに土地素因の種類や性質によってほぼ決まります.たとえば,大雨が斜面に降れば斜面崩壊が,低い土地に降れば内水氾濫が生じます.地震が軟らかい地層に作用すると大きな震動が,海水を揺らすと津波が発生します.
誘因の発生予測,とくにいつ起きるかを予測するのは難しいのが現状です.また誘因は,程度の差はあるものの,どこででも起こり得るものです.一方,土地素因は場所ごとにはっきりとした性質を備えていて,ひとたび誘因が作用した場合に,そこで発生する災害の種類と危険度・危険域を,おおよそ決めています.水は低きに従うという言葉どおりに,洪水 (土砂もまた同じですが)の動きは地形によってほぼ決められ,地震は地盤の硬さに応じた強さの揺れを示します.
予測が難しいうえに,それぞれの場所についてみれば発生が一般に稀であり,また,非常に強い力を持っている,という性質の自然力に対しては,いつ起こったとしてもうまく避け,やりすごすことができるように備えるのが基本です.土地素因から地域・地区の災害危険性を判定し,危険の種類や程度に応じた土地の利用を行うのが,このような性質の災害に備える最も有効な対応手段となるでしょう.ただし防災だけでは社会は成り立たないので,危険地の利用は避けられませんが,その場合,土地の危険性に応じた対応策,とくに災害発生時に向けた事前準備を,災害に関する知識を基にして,基本的には自らの責任で行っておく必要があります.
客員研究員 水谷武司