1960年チリ地震津波災害 -遠地津波への対応-

8. 津波対策

津波は強大な破壊力をもち,到達標高は数10mにもなる可能性があるので,緊急避難が最も必要な災害です.したがって気象庁は,地震を観測したらまず津波の可能性と規模の予測を行います.津波予測は,多数の津波数値計算を行なっておき観測した地震の最大振幅・震源位置・深さなどと照合して類似の津波計算例を検出するという方法に基づいて迅速に行います.津波警報の海岸域への伝達は,同報防災無線の屋外スピーカーなどで行われます.海岸は風が強いのでこれはうまく伝わりません.また,海岸線は非常に長くこのような装置があるところは限られます.

したがって,海岸に居合わせた人は,自らの判断と行動で危険の接近を認知し回避する対応が必要です.第1波が引き波であれば,海が異常に干上がるので,津波の襲来がよくわかります.押し波の場合,白い波の壁が沖から押し寄せてくるのをいち早く認めて,最も近くにある高所へ駆け上がらねばなりません(図10 津波避難場所).海岸近くの山の斜面や崖には避難用の道路や階段を作っておく必要があります.鉄筋コンクリート造など強固な中・高層建物も緊急の避難場所に適します.防潮堤などのハードな手段には大きな限界があります.高地への集落移転は抜本的な危険除去策ですが,経済活動上の立地や日常生活での利便性が優先されるのでこれは容易ではありません.

図10 津波避難場所
津波避難場所