1960年チリ地震津波災害 -遠地津波への対応-

4. 太平洋の津波

大きな津波は海溝型巨大地震によって発生じます.地球上における海溝の大部分は太平洋にあり,環太平洋地震帯をつくっています.したがって日本へは太平洋の各地から遠地津波が襲来しますが,津波伝播の障害となる地形の配置により,大きな津波の記録はチリ海溝および千島・カムチャッカ海溝~アリューシャン海溝から伝播してくるものにほぼ限られています(図4 日本に到達した遠地津波の発生場所).

太平洋の中央にあるハワイでは,多方面からの遠地津波がやってくるので,たびたび被害が生じています.1960年チリ津波でもハワイ島ヒロを中心に死者61などの被害がありました.1946年アリューシャン地震(M9.3)による津波の被害は大きくて,死者173,建物全壊443などでした.この津波を契機として太平洋東北部に津波警報システムがつくられました.

1960年の津波がハワイへ到達したのは,日本への到達の7時間前でしたがこの情報は生かされず.気象庁が最初の警報を出したのは伊豆大島で第1波到達を観測してから2時間以上後のことでした.現在では太平洋全域に警報システムが整備されています.また,南に2,000km離れた南鳥島に津波観測施設を設置して日本に向かってくる遠地津波の検出を行っています.外洋での津波観測は水圧変化やGPSを利用して行われます.

図4 日本に到達した遠地津波の発生場所
気象庁(1961):チリ地震津波調査報告.気象庁技術報告第8号.

日本に到達した遠地津波の発生場所