1960年チリ地震津波災害 -遠地津波への対応-

2. 津波の発生と伝播

海底下を震源とする強い地震が起こり,海底面の急激な隆起・沈降が生ずると,この地形変化は即座に海面の変化に移し換えられ,続いて海水全体が激しく流動して,四方へ拡がる波が発生します.この津波は水深に比べ波長が長いという長波です.その速度は水深の平方根に比例するので,津波が深い外洋から浅い海岸部にやってくると進行が遅くなります.伝播速度は水深4,000mで毎秒200m,水深10mでは毎秒10mです.進行速度が遅くなると後からやってくる波が追いついてきて重なるので,海岸近くでは津波の高さが大きくなります.沖では波動がほとんど感じられないのに津(湊,浦)では高い波になるということで津波と名づけられ,国際語になっています.

地震による津波は,海底面が隆起あるいは沈降した範囲で生じます.これを波源域といいます.マグニチュード(M)の大きい地震は広範囲に地殻変動を起こすので,震源が海域であると波源域は広くなって,大きな津波を発生させます.海溝は沈み込みプレートの境界をつくるいわば巨大活断層であり,この活動はM8~9クラスの巨大地震と大津波を引き起こします.波源域は通常長円形で,その長軸は海溝に平行に伸び,M9の地震では長さが1000kmのオーダーになります.1960年チリ地震ではチリ海溝に沿って南北に伸び,その長さは1,100kmに達しました.2004年スマトラ沖地震(M9.0)では,ジャワ海溝沿いに非常に細長く伸び,長さ1,000km,幅250kmでした(図2 2004年スマトラ沖地震津波).海底が隆起した側では押し波を先頭にして拡がり,沈降の側では引き波が先行します.

図2 2004年スマトラ沖地震津波
2004年スマトラ沖地震津波