1960年チリ地震津波災害 -遠地津波への対応-

7. 2010年チリ地震津波

2010年2月27日15時34分(日本時間,現地では午前3時34分)に,1960年の地震の震源域北側でM8.8の巨大地震が発生しました.断層の長さ500km,幅200km,すべり量8~11mでした.これにより生じた津波は翌日の14時前から日本沿岸に到達しはじめ, 1.2mの最高水位が三陸と四国の検潮所で観測されました.陸上での到達標高は局地的にこの2倍を越え,建物浸水被害や水産施設被害などが生じました.被害額は三陸海岸における養殖施設を中心に約63億円でした.風波による海水の運動は海面近くだけであるのに対し,津波では海面から海底までの海水全体が運動するので,海中・海底の施設も被害を受けます.

日本時間の朝にハワイに到達した津波の観測値などに基づき,日本では高さが3mを超える恐れがあると判断され,「大津波警報」が9時33分に発表されました(図9 津波警報・注意報の発表海岸).これにより全国でおよそ160万人に避難の勧告・指示が出されましたが,公共の避難所に避難した人の割合は小さかったようです.ただし,尾根・丘の上や頑丈な建物などに退避するのが津波に対する正しい避難行動ですから,実際の避難者数はもっと多くなります.陸上での到達高の半分に達しない検潮所観測値がテレビなどで連続して報道され,ちょうど日曜日の午後ということで国民の大多数はこの情報に接していましたが,危険意識の喚起などにはあまりつながらなかった可能性があります.

津波警報・注意報がすべて解除されたのは,ほぼ24時間後の翌日10時15分でした.仙台で最大波1.1mを観測したのは第1波到達から8.5時間も経った後のことであり,遠地津波は長い時間引き続いて襲来し最大波が非常に遅れて到達することがあるので,警報発表時間が長くなり種々の社会的影響をもたらします.

図9 津波警報・注意報の発表海岸
津波警報・注意報の発表海岸