2006.1.27自然災害情報学習会

第7回 ハザードマップが活かされなかった噴火泥流災害

-南米コロンビア,ネバド・デル・ルイス火山の1985年噴火-

 1985年11月13日,ネバド・デル・ルイス火山(標高5399m)は激しく噴火し,火砕流(pyroclastic flow)が山頂部を覆う氷河を融かしました.これにより発生した大規模な泥流(mudflow)は山頂から80kmの遠方にまで達し,死者数2万3000人という大災害を引き起こしました.被害が最も著しかったのは山頂の東方45kmのところにあった人口2万9000人のアルメロ市でした.この市街のほぼ全域は泥で埋められ,ここで2万1000人もの死者を出しました.この噴火の1ヶ月前にハザードマップが作成・配布されていました.この図では谷の出口の扇状地に位置するアルメロは泥流の危険域であることが明示されていました.しかし,大被害を防ぐことには役立ちませんでした.火山泥流は全く地形に支配されて運動するので,その危険域は精度よくゾーニングできます.しかし,流動性が大きくて遠方にまで到達するので大きな被害をもたらすことがしばしばです.大災害は多数の不運な条件が重なって発生します.この災害でも適切な避難行動を妨げるいくつもの自然的,社会的・人間的要因が関わっていました.

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