2005.10.4自然災害情報学習会

第4回 大きな高潮災害が繰返し発生するV字状湾奥の大河川デルタ沿岸

-バングラデシュのサイクロン災害:1970年11月,1991年4月-

 1970年11月12日の深夜,発達したサイクロンの来襲により,ベンガル湾最奥部のデルタ沿岸域は最高潮位(tide level)が8mを越える大きな高潮(storm surge)に見舞われました.バングラデシュにおける死者・行方不明は30~50万人でした.1991年には死者数およそ30万の高潮災害が生じました.死者1万人を越える高潮災害は,バングラデシュにおいて10年に1回ほどの頻度で起こっています.このような大高潮災害の頻発は,高潮潮位を高くする海岸地形等の自然地理的条件と,人的被害を大きくする社会的な要因(主として貧困)によるものです.ベンガル湾の釣鐘状の平面形,湾内でのサイクロンの発生と発達しながらの移動,ヒマラヤからの大量の土砂流出によるデルタの絶えざる変化と遠浅海岸(gently shelving beach)の形成,大きな天文潮(astronomical tide)などが,高潮を大きくする自然地理条件です.人口圧力による沿岸危険域への居住,土地無し層が農民の多数を占めることによる大量の季節労働者の存在などが,死者数を多くする要因になっています.

[自然災害情報学習会トップページ自然災害を学ぶトップページ自然災害情報室]