2005.8.2自然災害情報学習会

第2回 地区ごとの被災の違いが際立つ旧輪中地帯の水害

-長良川の破堤洪水:1976年9月台風17号-

1976年9月12日,台風17号の豪雨により,長良川堤防が中流部で破堤し,約17km2が浸水しました.この地域はかつての典型的輪中地帯ですが,輪中堤の多くはすでに取り壊されていました.しかし,下流の輪之内町との間にかろうじて残されていた輪中堤により,氾濫水の流下が阻止されて下流への浸水域の拡大が防がれました.これにより,(水郷)農民の知恵が生んだ輪中の機能が再認識されることになりました.輪中とは,水害防御のために集落および農用地を輪形の堤防で囲んだ地域をさします.また,その地の住民によって構成される水防共同体をも意味します.濃尾平野は地殻運動により全体として西に傾く傾動運動(tilting)を行っているので,平野の西部ほど地盤高(ground height)が低くなっています.このため木曾3川の流路は西南部に集まり,かつては縦横に交錯して流れていました.この地域(乱流域)に住み着いた住民は,周りを取り囲む堤防を築いて水害から集落と農地を守る自衛手段としました.輪中は排他的な性質のもので,地区間の利害が相反します.水害時にはそれがとくに際立ちます.

[自然災害情報学習会トップページ自然災害を学ぶトップページ自然災害情報室]