2006.6.27自然災害情報学習会

高い尾根を乗り越えたり大津波を起こしたりする巨大崩壊による岩屑なだれ

-1970年ペルー地震によるワスカラン岩屑なだれ,1984年御岳崩れなど-

1970年のペルー地震(M7.7)により,ペルーアンデスの6000m峰ワスカランの山頂部がアイスキャップと共に大規模に崩落しました.これにより発生した総体積約1億m3の巨大岩屑なだれ(debris avalanche)は,平均時速300kmを超える高速で14.5km流れ下りました.岩屑なだれの一部は谷底からの高さが230mある尾根を乗り越え,人口2.5万の街ユンガイを5mの厚さに埋めました.これによる死者はおよそ1.5万人でした.日本では,1984年の長野県西部地震(M6.8)により,木曽御岳において土砂量3600万m3の巨大崩壊と岩屑なだれが発生しました.1792年に雲仙岳・眉山が,おそらく地震が主要な誘因(triggered)となって,総体積3.4億m3の巨大崩壊を起こしました.この大量の岩屑は,有明海に突入して最大高さ23mの津波を発生させました.崩壊土砂の運動した標高差と水平距離との比(等価摩擦係数)(equivalent roughness coefficient)は,通常規模の崩壊では0.5程度です.しかし,大規模な岩屑なだれではこれが0.1ほどにもなり,より長距離を高速で流動します.大型成層火山(strato-volcano)は非常に不安定な内部地層構造(geological structure)をもっているので,巨大崩壊を起こす代表的な地形です.

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