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7.3 災害対応の現場から現地調査において、被災現場で対応にあたった人々のインタビュー調査の概要について報告する。 (1)医療支援活動 AMDA(アムダ)1)本部を岡山に置くアムダは、医療活動を中心とした国際的ボランティア組織である。 同団体は、ハリケーンカトリーナでは、早期の段階で、援助活動を開始した。「まずはテキサスに調整員、医者、看護婦を送り、ニーズ調査を行った。そしてマイノリティであるベトナム系住民への災害援助支援が手薄であることを認識し、ベトナム系住民を中心に支援対象をしぼり」活動した。その後、アムダは、約 8000人といわれる被災地区のベトナム系アメリカ人が「カトリーナによる被害の甚大さや治安・非衛生的な環境、政府による復興活動の遅延から、多くの被災者達は未だ帰還すらできず、借りに帰還したとしても再建の目処がたたない生活を送っている」という現状を考慮。米国疾病予防管理センターによるカトリーナ復興活動者に対する推奨基準値の予防具を、オーリンズ郡、プラクミン郡、セント・バーナード郡のベトナム人教会を統括するメアリー・クインズ・ベトナム・チャーチに寄付した。 このアムダの支援活動に、ボランティアとして協力した邦人H 氏は、アムダが共同できる団体の調査をし、上記ベトナム人教会を選定、調整した。同氏は、復興のため「帰還した住民やボランティア達は、医療保障も無く、劣悪な環境の中、常に自分の健康は自分で守らなければならない状況」で活動していたと報告した。 (2)Port of New Orleansのセキュリティ担当者Port of New Orleans(http://www.portno.com/)は、ミシシッピ川の貿易、クルーズ船やその他同河川の交通設備及びセキュリティを管理している。その運営は、7人の委員からなる委員会に委ねられている。委員の任期は5年。ルイジアナ知事が、19の地方ビジネス、市民、労働者、教育、及び海事グループより推薦された人材のリストから、それらメンバーを指名する。今回我々のインタビューに協力して頂いた S氏は、同団体のセキュリティ担当。各警察と連携し、ミシシッピー川沿岸のセキュリティの管理をしている。カトリーナ上陸時には、事務所に残り、緊急要請により船を用意するなど、緊急対応にあたっていた。インタビューの内容は、災害時のコミュニケーション問題を中心に多岐に渡った。 S 氏は、今回の災害における今後の課題として、コミュニケーション問題を強調した。助けが求められない、水や電気もなくなったそれらの場所に人を送ることもできない、警察どうしの意思疎通ができない、などコミュニケーションシステム停止が多くの問題を引き起こす元凶となったと指摘した。ニューオーリンズ市では、緊急時に「ニューチュラルエイド」という中間的なオペレーターが、緊急事態の報告者と担当者を結びつけるというシステムであったが、今回のカトリーナではまったく機能しなかったという。また、通信システムに関する予算が7億ドル用意されていたにもかかわらず、皮肉にも、それが実現されるまえにカトリーナが来襲してしまった。 このコミュニケーション問題と関連して、大きな問題となったのが「うわさ」であった。「うわさだとわかっていても、それを確認するための人員を派遣しなければならず、緊急活動の大きな足かせになった」と同氏は伝えた。 最後に、S 氏は、同団体における活動の優先順位の第一は人命救助である点を強調した。関連して、今回のカトリーナ災害では、緊急要請により船を出したが、救助人員の多さから大型船がよいという考えは短絡的で、緊急時の救出活動では、機能的な小型船が却って利用価値が高いなど、救助に対する「適切さ」への教訓を報告した。 (3)日本国領事館日本国領事館の業務では、邦人の安否確認が第一の優先事項であるものの、大災害に直面した際の安否確認の難しさを経験した。この教訓から、同領事部では、メーリングリストの整備等、大災害時に考えられる対応についての再検討を開始した。 (中須正)
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