. ハリケーンカトリーナ災害調査速報

6.2 人的被害の推移3)

これまでのハリケーンカトリーナによるニューオリンズの人的被害の推移を以下のように時系列で分類した。

A)カトリーナ、ニューオーリンズ(NO)上陸直前

B)カトリーナNO通過時~数日間

C)カトリーナNO通過時~一週間

D)カトリーナNO通過時~二週間

E)カトリーナNO通過時~三ヶ月

ここでは、各時期において中心的に出現してくる被害を概略する。 なお今回は、暫定版としての概略分析であり、改定、詳細は次回の報告に譲る。

A)カトリーナNO上陸直前

1.避難活動

避難者の体力及び財力の消費、避難不可層の問題がある。体力及び財力の消費に関しては、避難する場合、避難先の選定、車の所有、など諸条件が揃わなければ、避難できず、避難する場合も遠距離・長時間に及ぶことが多い。財政的負担はもちろん、かなりの体力を消費する現実があった。当然これらの条件を満たさない層は避難不可となり「安全」に対する自身によるコントロールを失う形となった。

B)カトリーナNO通過時~数日間

1.風水害による直接被害

NOでは、堤防の決壊による水害、街の水没があり、これらにより多くの人命が失われた。

2.停電・ライフラインの停止

カトリーナによる間接被害の筆頭として挙げられる。これにより、避難不可層の生活は一層困難になり、後に被災者の心理面に大きな影響を与えた。

3.コミュニケーションの不能

援助活動への影響、安否確認の不可、さらには「うわさ」などの風評被害の温床、など多くの問題を引き起こす原因ともなった。

C) カトリーナNO通過時~一週間

1.ストレスの増大

前述の停電・ライフラインの停止、及びコミュニケーションの不能と密接に結びついている。被災者の心理面への負担が蓄積された裏返しといえる。また、「うわさ」などの風評被害も被災者の心理に大きな影響を与えた。

2.社会的不適合行動の発現

上記のストレス増大の結果、また、被災者の被差別層や貧困層などの避難不可層による絶望の反映とも考えられる。具体的には略奪行為、レイプ、および殺人などが報告された。

3.治安不全

これら社会不適合行動によって治安が悪化し、不全に陥る状態を示す。中でも警察による職務放棄、窃盗などの行動はそれらを加速させた。

D) カトリーナNO通過時~二週間

1.衛生状態悪化

ハリケーン時に工場などからの有害物質の排出規制が解除されることも一因となった。これらが水害と重なって、深刻な問題が引き起こされた。また、街の水没による大腸菌など細菌の繁殖やそれらの感染による死亡も報告された。

2.生物的・社会的弱者の被害拡大

避難時における差別、長期に渡る避難生活による負担などが影響し、老人、子供、身障者、病人、受刑者など生物的、社会的弱者に被害が集中して現れた。

E) カトリーナNO経過時~三ヶ月(現在まで)

1.避難者の帰還

インフラの整備と絡んでNO復興の重要な課題として浮上した。

2.精神障害

家族や財産を失った被災者を中心に、将来への不安など被災者の心の問題がクローズアップされた。自殺者なども報告されている。

3.失業

被災以前のビジネス活動が不全に陥った結果、多くの被災者が職を失った。復興関連事業では、以前居住していた層とまったく違う層(例えばスパニッシュなど)が労働者として流入している。

4.保険

保険金支払いをめぐり、保険会社と被災者の間での意見の食い違いが多数報告されている。

5.財産喪失

前述の保険と関連して、カトリーナによる財産の喪失が現実問題として被災者に重くのしかかってきた。

6.義援金詐欺

義援金募集を装ったインターネットによる詐欺など、被災者支援を利用した詐欺が横行した。

7.教育の継続

NOでの教育システムが整わないため、初等、中等、高等教育段階の在学生の教育継続に関わる不安が残されている。
以上、カトリーナによる人的被害の時系列推移の概略を追ったが、これらカトリーナ被災者拡大全体の背景として、行政によるマイノリティやアフリカンアメリカンなどに対する人種差別的対応の影響が指摘されている。
(中須正)
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