. ハリケーンカトリーナ災害調査速報

1. 調査の目的

 2005年8月、アメリカ南部を襲った巨大なハリケーンカトリーナがメキシコ湾岸沿いのルイジアナ、ミシシッピ、アラバマ州を襲い、1,000人以上の死者、甚大な経済被害、環境被害、そして、間接被害等々をもたらした。特に、大都市ニューオリンズの水没は、災害直後の対応の混乱、治安の悪化、避難の長期化等々の様々な問題を発生させた。そして、3ヶ月経っても、電気等の社会インフラが復旧せず、住民が自宅に戻れない状態が続いている。
 大河川ミシシッピ川下流部のデルタ地帯に発達するニューオーリンズは、都市を取り囲む堤防と排水ポンプによってかろうじて水没を免れている地域である。しかし、今回の災害では、メキシコ湾で発生した高潮が都市の生命線である堤防を破壊し、町を水没させたのである。日本の大都市も同じような水害リスクを抱えている。実際、1959年の伊勢湾台風では、伊勢湾で発生した高潮が海岸堤防を破壊し、濃尾平野のデルタ地帯に展開する名古屋南部の工業地帯や干拓地を襲い、死者5,000人以上を出したのである。伊勢湾台風当時より、水害危険地帯には人口資産が集中し、土地利用は高密度化・複雑化し、被害ポテンシャルが増大する中で、地球温暖化による巨大台風の発生可能性が叫ばれる時代となった。
 巨大なハザードの発生は稀ではあるが、一旦発生すると大規模被害に結びつき、しかも被害が広域にわたる。ハリケーンカトリーナのようなタイプの災害に対して、今後、どのような被害軽減対応を、どのようにすすめたらよいのだろうか。

 防災科学技術研究所では、カトリーナ災害の実態を調査し、事前・事後の被害軽減対応の課題を明らかにし、今後の水災害の被害軽減に資するため、学際的な災害調査チームを結成し、国内で情報収集を行うとともに、4名を11月30日から12月8日の日程で現地調査を行った。現地では、US Army Corps of Engineersの協力による被災現場調査、地域の防災関係組織や被災者、ボランティアからの聞取調査、Tulane 大学やLouisiana 州立大学の研究者からの聞き取りと討論を行った。
 災害報告書は、今年度中に刊行予定であるが、現在までに得られた情報を速報の形で報告する。
 なお、今回の調査にあたっては、防災研究フォーラムからのご支援もいただいた。

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