阪神・淡路大震災から学ぶ-何が被害・混乱・苦難を大きくしたか-

 建物被害とりわけ住宅全半壊数が震災の規模をほぼ決めます.これは一次破壊被害の主要なものですが,それだけにとどまらず死者(直接および関連死)数,出火数,被災者(要救護者)数,避難所・仮設住宅必要数,瓦礫量などを決定するのです.建物破壊は強震動時の短時間に起こるので,震災の大枠は地震が起こったときにすでにほぼ決まっていることになり,それを防ぐには予め建物を耐震的にすることが不可欠であることを示します.阪神大震災による建物全壊は10.5万棟(18.2万世帯),半壊は14.4万棟(27.6万世帯)で,建築年代の古い在来構法の木造住宅の被害が大でした.とくに木造2階建て集合住宅(文化住宅など)や長屋の被害が目立ちました.近畿とその周辺域では被害大の地震が集中して発生しており,活断層は非常に密に分布しているのですが,なぜか地震への備えは低かったようです.死者数は6424人,うち火災によるもの560人,避難生活のストレスなどによる関連死912人でした.火災および関連死を除く死者およそ5000人の95%が建物倒壊を原因としておりほぼ即死の状態でした.死者数と住家全半壊数との比例的関係は自然災害全体について認められますが,地震ではこの関係は直接的であり,とりわけ阪神大震災では発生が早朝であったことにより際立ちました. 地震後の火災による焼損棟数は7600,17日中の出火数204,うち地震直後の6時までに約半数の95が出火しました.建物全壊率と出火率とは比例関係にあり,地震直後に集中発生するので,建物全壊が多いと同時多発により出火の多くが必然的に延焼に発展し火災規模を大きくします.倒壊による道路閉塞は消防活動を大きく阻害します.風が弱くて延焼速度は時速20m程度と遅かったので,建物が完全倒壊しなければ火災死者560の多くは助かったはずです.住宅全壊の世帯は18万で少なくとも40万以上の人が完全に生活の根拠を失いました.この被災者の多くを避難所に収容し,食料・生活物資を供給し,応急仮設住宅を建設して入居させ管理し,住宅再建の援助などを行う必要があります.公的避難所への避難者はピーク時に32万人,仮設住宅建設数4.8万戸でした.住む家が残っていれば関連死912人の大多数はなかったはずです.

 建物倒壊は大量の瓦礫・ゴミを発生させます.これは兵庫県全体で2000万トンに達しました.倒壊建物の解体・運搬は粉塵・アスベストを撒き散らし,交通混雑を起こしました.2003年現在,耐震性不十分の住宅は1150万戸(総数の25%)あり,木造戸建てでは全体の40%,1000万戸が耐震性不十分とされています. 耐震改修は年に5万戸,建替えは年に40万戸程度のペースなので,既存建物の耐震改修の促進が震災対策の最重要課題の一つです.

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