メールマガジン「自然災害情報の収集・発信の現場から」
メルマガ「自然災害情報の収集・発信の現場から」第16号(2011年05月11日発行)
◆本日で東北地方太平洋沖地震の発生からからちょうど2ヶ月となりました. 被災された皆様の健康をお祈りいたします.前回の予告では,メルマガを通常 紙面に戻す予定でしたが,今号も引き続き特別紙面でお送りいたします.
◆自然災害情報室では現在,サーバー内のコンテンツ整理に伴い,ウェブサイ トの一部にリンク切れが生じております.日頃利用いただいている皆様にはご 不便をおかけし,大変申し訳ございません.今月末までの復旧を目指し作業を 進めております.なお,トップページのURLは< http://dil.bosai.go.jp/ >と なっております.ブックマークの変更等よろしくお願いいたします.引き続き, 防災科研 自然災害情報室をよろしくお願いいたします.また,コンテンツ整 理に伴い,今月号のアンケートは休止させていただきます.
★このメールマガジンはご自由にご転送ください.災害研究や防災に関心のあ る方々との情報交換の場にしたいと考えております.セミナー・シンポジウム などイベント情報,本や論文の紹介と書評など,読者の皆様に役立つ情報はで きる限り掲載しますので,ぜひ情報をお寄せいただきたいと思います. < library@bosai.go.jp >までお願いします.
CONTENT
- 自然災害情報室からのお知らせ
- 特集 東日本大震災調査報告
- 防災コラム <防災科学の基礎知識>第十六回
- 新刊情報
自然災害情報室からのお知らせ
◆日本地球惑星科学連合大会での自然災害情報室ブース展示のお知らせ
防災科学技術研究所では,来る5月22日(日)から27日(金)まで,幕張メッセ
国際会議場で開催される「日本地球惑星科学連合2011年大会」の団体展示に出
展します.展示場所は,会場2階の階段を上がった正面付近(ブース番号:42-
45,50)です.自然災害情報室も東日本大震災関連の展示を行います.大会に
参加される皆様は是非お立ち寄り下さい.
地球惑星連合のHPはこちら http://www.jpgu.org/meeting/index.htm
特集 東日本大震災調査報告
◆自然災害情報室では地すべりチームと合同で東日本大震災以降,青森・岩 手・宮城・福島・茨城の各県での災害調査を実施しました.今回は4月に実施 した調査のうち,茨城・福島の調査報告をご紹介します.
◆茨城県内 茨城県内では水戸市,ひたちなか市および茨城県南沿岸部の土砂災害を中心に 調査を行いました.
水戸市内では,東照宮周辺の調査を行いました.東照宮の斜面では表層崩壊を 起こしており,聞き取りの結果,50年ほど前に地山の斜面を宅地造成し,斜面 を削剥していたことが判明しました.また,水戸市酒門町では住宅地内で地す べりが発生しており,地すべり末端部からは湧水も認められました.
茨城県南では液状化の被害が多くみられ,神栖町では液状化の被害が広範囲に
わたり,非常に顕著でした.詳細,写真等は以下のpdfをご覧ください.
◇水戸市内の斜面変動と茨城県南沿岸部の地盤災害被害調査報告
http://lsweb1.ess.bosai.go.jp/disaster/tohokukantoeq2011-w02/files/20110407_nied_landslide.pdf
◆福島県内
福島県いわき市田人町にて,4月11日直下型地震による災害調査を行いまし
た.地表震源断層のクラックや水田内の上下変位などがはっきりと見受けられ
ました.詳細,写真等は以下のpdfをご覧ください.
◇2011年4月11日福島県直下型地震による地表地震断層調査
http://dil.bosai.go.jp/disaster/2011eq311/pdf/110414_fault.pdf
また,4月11日に発生した地震による地すべり災害の調査を実施しました.
いわき市渡辺町上釜戸周辺の地すべりでは移動体内部の調査を実施しました.
詳細,写真等は以下のpdfをご覧ください.
◇2011年4月11日福島県直下型地震による土砂災害調査
http://dil.bosai.go.jp/disaster/2011eq311/pdf/110414_landslide.pdf
新刊情報 最近出版された災害・防災関連図書を紹介します.
★道路震災対策便覧. 震災危機管理編
【編者】日本道路協会編
【発行者】日本道路協会 【発行年月】2011.1
【価格】¥4,200(税込) 【ISBN】9784889506082
★建築工事施工計画等の報告と建築材料試験の実務手引 :
建築基準法第12条第5項に基づく. 2010年度版
【監修者】東京都防災・建築まちづくりセンター
【発行者】ぎょうせい 【発行年月】2011.1
【価格】¥5,400(税込) 【ISBN】9784324092453
★災害がほんとうに襲った時―阪神淡路大震災50日間の記録
【著者】中井久夫
【発行者】みすず書房 【発行年月】2011.04
【価格】¥1,260(税込) 【ISBN】9784622076148
★闘う日本-東日本大震災1ヵ月の全記録
【発行者】産経新聞出版 【発行年月】2011.04
【価格】¥1,365(税込) 【ISBN】9784819111287
★東日本大震災
【発行者】読売新聞東京本社 【発行年月】2011.05
【価格】¥1,575(税込) 【ISBN】9784643110050
★防災コミュニティの基層―東北6都市の町内会分析
【編著者】吉原 直樹
【発行者】御茶の水書房 【発行年月】2011.3.30
【価格】¥4,830(税込) 【ISBN】9784275009265
【書評掲載】 朝日新聞2011年04月10日
★防災教育の展開(シリーズ・防災を考える〈6〉)
【編者】今村 文彦
【発行者】東信堂 【発行年月】2011.3.31
【価格】¥3,360(税込) 【ISBN】9784798900551
★防災・救急に役立つ日用品活用法 新版
【著者】羽田道信
【発行者】風媒社 【発行年月】2011.04
【価格】¥1,155(税込) 【ISBN】9784833101448
★阪神淡路大震災ノート 語り継ぎたい。命の尊さ 新版
【著者】住田 功一
【発行者】学びリンク 【発行年月】2011.4.11
【価格】¥1,050(税込) 【ISBN】9784902776577
★図解 北陸の地震・津波・原発―わが家の災害対策
【発行者】(金沢)北國新聞社 【発行年月】2011.4.30
【価格】¥1,299(税込) 【ISBN】9784833018043
★待ったナシの防災習慣 【著者】橋本真希
【発行者】文芸社 【発行年月】2011.05
【価格】¥1,260(税込) 【ISBN】9784286109442
★原発防災を考える 自治体の債務とひとりができること
(桂ブックレット 5) 【著者】山本定明
【発行者】桂書房 【発行年月】2011.04
【価格】¥840(税込) 【ISBN】9784903351964
★山村流 災害・防災用語事典(これだけは知っておきたい!)
【著者】山村武彦
【発行者】ぎょうせい 【発行年月】2011.05
【価格】¥2,299(税込) 【ISBN】9784324092712
防災コラム <防災科学の基礎知識>
第十六回 津波の危険海岸と危険域
津波は海岸に近づくと,水深が小さくなることにより進行速度がしだいに低下 してきます.そこへ後からやってくる海水が追いつき押し込み重なり合うよう な状態になって,波高を増します.奥ほど狭くなっている湾に進入してくると, こんどは横から押し込まれることにより,湾奥で波が高くなります.湾の幅の 狭まりの度合いが大きいほど,また,湾の外海が深くて湾内における水深の減 少度が大きいほど,増幅の程度は大きくなります.
湾はそれぞれ平面形や水深分布などで決まる固有周期(非常に揺れやすい周 期)をもっています.津波の周期がこの固有周期に一致すると,共振現象によ り波高が高くなります.日本近海で起こるM8クラスの地震による津波の周期は 10~20分程度です.これに対しチリ沖などの遠くから来襲する巨大津波の周期 は40~60分程度と長くなるので,近海の津波とは異なった波高増幅を示します. 海岸線が複雑な形をとるところでは,対岸などから反射してくる波が重なり合 って,局地的に波高を増すことがあります.岬のような突出部では,屈折によ り波が集中して高い打ち上げが生じます.
このような波高増幅の条件から,海岸線の大きな屈曲が連続するリアス海岸が, 津波危険海岸の第一に挙げられます.リアス海岸は,谷により深く切り刻まれ た山地が地殻運動で沈降し,谷間に海が入り込んで出現した海岸で,湾内や湾 口はかなり深い海になっています.多数ある小谷の出口には狭くて低い海岸低 地が散在して分布し,そこに数多くの小集落が立地して,津波に対し脆弱な居 住状況が出現します.
延長200kmにわたりリアス地形が連続する三陸海岸は,巨大地震の発生が非常 に多い日本海溝北部に面するという条件があるので,世界最大の危険海岸とな り頻繁に大きな津波災害を被っています.巨大地震の震源域に面するリアス海 岸には,他に志摩半島があります.
直線状の海岸でも遠浅であると,津波は大きな遡上(駆け上がり)を示します. これは,海岸近くの海底勾配が小さいと,引き波のときの海水の戻りが遅くな るので,陸地内に進入した海水はあまり引き戻されることなくより内陸まで前 進できるからです.海岸線に砂州が連続する低くて広い海岸平野では,流入し た津波はほとんど海へ戻ることがなく,流入量と地形に応じて平野内部に拡が り滞留します.大きな河川の河口部低地では,抵抗の小さい河道内を速い速度 で遡上した津波が溢れ出して,浸水域を広くします.先細まりで比較的緩傾斜 の谷に津波が進入すると,海岸での波高より2~3倍も高いところまで到達しま す.津波の周期が小さいほど,この到達の高さは大きくなります.周期が小さ いと,海面の変化が早いため流速が大きくなるからです.津波の数値計算によ ると,海が遠浅で海岸低地面がやや急勾配である場合に大きな遡上を示します. 長い周期の津波が広い海岸平野に侵入すると,短い場合に比べ到達の水平距離 が長くなります.
津波の危険海岸や到達危険域は,このように主として地形によりおおよその指
摘はできますが,津波は非常に大きな規模になる可能性があり,また,巨大な
破壊力を持っているので,安全をみて十分な高さや距離を見込むという防災対
応が必要です.
(水谷 武司)
編集後記
今回,現地調査を行い感じたことは,報道されていない多くの地域で津波や地 震の被害に遭っているということでした.茨城県南地方はあまり報道もされて おらず,実際に現地を目の当たりにすると,被害は非常に広範囲でした.今後, 埋もれがちな災害の情報をお知らせする必要があると改めて痛感いたしました.
◆次号,第17号は6月8日(水)発行,第18号は7月8日(金)発行の予定です. 第17号に情報・告知等の掲載をご希望される方は,6月5日までにご連絡 くださいますようお願い申し上げます.
発行 防災科学技術研究所 自然災害情報室
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