防災基礎講座
Ⅰはじめに
Ⅱ気象災害 
  気候帯
  低気圧
  降雨地帯
  乾燥地帯
  冷夏災害域
Ⅲ地震・火山災害
  プレート構造
  地震帯
  地震災害
  火山帯
  噴火災害
Ⅳ社会経済環境
  社会水準
  経済被害
Ⅴ世界の災害
  概要
  アジア
  ヨーロッパ
  アフリカ
  北アメリカ
  南アメリカ
  オセアニア
Ⅵ日本の災害
 概要
 北日本
 東日本
 西日本

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6. 南アメリカ

 ほぼ全域が沈み込みプレート境界にあたる大陸西岸(太平洋岸)および北西部(カリブ海沿岸)には,延長8000km,幅300~600kmという陸上では最も長いアンデス山脈が連なっています.これに縁取られた大陸主部は地殻変動のない広大な安定大陸です.ここをアマゾン・ラプラタ・オリノコの大河川が流れ,この3河川の流域面積は南米大陸の2/3をも占めています.アマゾン川は特に大きくて流域面積は世界でとびぬけて最大です.(図5.7

気象災害

 降雨量は多くて,年平均降水量1350mmは全大陸中最大です.これから蒸発量860mmを差し引いた年平均流出量490mmも最大です.この大量の流量をアマゾンなどの河川が海へ運び出しているのですが,大平原は広大で河床勾配はきわめて緩やかなので,河水はゆっくりと海まで流れ出します.アマゾン流域南部とラプラタ上中流域,オリノコ流域は熱帯サバンナ地帯で,雨季と乾季がはっきりとしています.雨季には河は大きく氾濫し,とくに低平なところには大湿原が出現します.これは年々繰り返される自然状態なので,通常は洪水災害とは受けとめられません.

 太平洋西部およびインド洋では,南緯5~30°に強い熱帯低気圧の発生・進行域があるのですが,大西洋および太平洋東部のこの緯度帯には発生が全くみられません.したがって,カリブ海に面する大陸北端のわずかな地域を除き,強い熱帯低気圧の来襲はありません.

 南米は都市人口比率が最大で巨大都市が多く,これに伴って危険な土地にも人口集中地区が多数形成されています.このようなところに豪雨が降り,とくにそれが起伏の大きい土地であると,大きな災害になります.ベネズエラで1999年12月に,2日間で900mmという季節はずれの豪雨があり,死者数3万の大災害が生じました.被害の中心は首都カラカスの北50kmの山が迫った海岸の街で,急斜面や谷の出口の扇状地に住宅が密集した地区が,山崩れ・土石流および洪水に襲われて,豪雨災害としては非常に大きな人的被害をだしました.人口の多いブラジル高地南部でも豪雨災害がしばしば発生しています.2001年11月には死者5000の洪水・土砂災害が起きました.

 ペルーの太平洋岸は,沖を流れる強い寒流のために年雨量が10mm前後の非常に乾燥した土地です.この寒流が弱まって起こるエルニーニョの年には雨量が100mmを超えることもあり,ときに災害となります.1982年は近年にない強いエルニーニョの年で,死者3000人以上の豪雨災害が生じました.

地震・火山災害

 アンデス山地域は沈み込みプレート境界の地震帯および火山帯です.1600年以降には,M8.0以上の地震が40回,M7.5以上が108回起こりました.M8~9クラスの巨大地震はペルー・チリ沖のペルー海溝で発生しています.1960年6月のチリ地震は観測史上最大のM9.5で,チリにおける死者5000人などの被害に加え,最大波高24mの津波により太平洋沿岸諸国にも被害を引き起こしました.チリ海溝沿いに細長く伸びた長さ1000kmの波源域の側面から太平洋沖に強く放出された津波は,大して減衰することなく太平洋全域に伝播し,日本で死者140,ハワイで死者80などの被害をもたらしました.太平洋全域に伝播する大遠地津波の発生源は南米沖が最多です.2010年には1960年の震源域の北でM8.8の巨大地震が,1906年にはさらにその北でM8.6の地震が発生しています.

 高峰が連なるアンデスにおける地震では大きな土砂災害も生じます.1970年のペルー地震(M7.7)では,ワスカラン北峰(6560m)の山頂直下の急崖が大規模に崩壊して土砂量約1億m3の巨大岩屑なだれが発生し,平均時速300kmを超える高速で山麓に流れ下りました.岩屑なだれの一部は谷底からの高さが230mある尾根を乗り越え,人口2.5万の街ユンガイを埋没し約1.5万人の死者をだしました.このような大岩屑なだれはこれまでに何度も起きていることが堆積層から認められています.この地域にはアドベ造りが多くて多数の建物が倒壊したので,この地震の全体の死者は7万にも達しました.

 アンデスにはおよそ90の活火山があります.その多くは一般山地の主稜線上に噴出し,高いものは標高5000mを超え氷河で覆われています.1985年11月のコロンビアのネバド・デル・ルイス火山(5,399m)の噴火では,火砕流が山頂部のアイスキャップを融かして大規模な泥流が発生し,山頂から80kmにまで達しました.これにより死者・行方不明2.3万人という大きな被害が生じました.被害が最も著しかったのは山頂の東45kmのところにあったアルメロ市で,市街の大半が泥に埋まり,2.1万もの死者を出しました.




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