防災基礎講座
Ⅰはじめに
Ⅱ気象災害 
  気候帯
  低気圧
  降雨地帯
  乾燥地帯
  冷夏災害域
Ⅲ地震・火山災害
  プレート構造
  地震帯
  地震災害
  火山帯
  噴火災害
Ⅳ社会経済環境
  社会水準
  経済被害
Ⅴ世界の災害
  概要
  アジア
  ヨーロッパ
  アフリカ
  北アメリカ
  南アメリカ
  オセアニア
Ⅵ日本の災害
 概要
 北日本
 東日本
 西日本

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3. ヨーロッパ

 バルカン半島・アルプス・南欧地中海沿岸の地帯は,アルプス・ヒマラヤ造山帯の西端で,かなりの起伏ある山脈がつらなっています.造山活動はアルプス山地ではほぼ終息しています.地震活動が活発なのはエーゲ海,バルカン半島南西岸域,イタリア南半部です.活火山はイタリア中央部・南部,エーゲ海南縁,および大西洋北部のアイスランドに分布します.この他のヨーロッパ地域は安定陸塊の盾状地・卓状地および古い造山帯です.北部・中部は氷床に削られてゆるやかな起伏を呈します.中央部・西部はほぼ1年中降雨のある冷温帯気候です.地中海沿岸はかなり乾燥した冬雨の地中海性気候です.大陸西岸であり強い熱帯低気圧は来襲しません.(図5.4

気象災害

 ヨーロッパにおける大きな暴風雨被害は,冬季に発達するアイスランド低気圧によって引き起こされています.黒潮とならぶ優勢な暖流のメキシコ湾流は,アメリカ東岸に沿って北上し大西洋北端にまで達しています.北極圏から流れ出す寒気流はこの暖かい海水から熱と水蒸気を得てアイスランド付近で強い低気圧を発達させます.この低気圧はヨーロッパに向かって南東に進行するので,北海では冬のほぼ半年の間風波が高く荒れます.北海に入ったアイスランド低気圧は台風並みに発達して,北海沿岸域に強風と高潮の被害をもたらします.

 1953年2月のアイスランド低気圧によりオランダでは海岸堤防が50箇所にわたって破壊され,500km2が浸水しました.死者は1800人,全壊家屋は3000棟でした.北海沿岸域全体の死者は2000人を超えました.1962年2月の低気圧は,中心気圧が955hpaにまで深まり,エルベ河口で最大4mの高潮を発生させ,北海沿岸諸国で死者約400人などの大きな被害をもたらしました.このような大きな災害は20世紀中に3回起こっています.

 オランダでは海面下の干拓地が広いので,昔から冬季の低気圧による高潮被害をこうむっています.1530年には死者40万人,1570年には死者7万人という大災害の記録があります.イギリスでも大きな災害があり,1703年にはテームズ川が高潮で溢れてロンドンは水没し,5,000戸の家が破壊され,300隻の船が沈んだとされています.

 ドナウ・エルベ・ライン・セーヌなどの大陸河川は,勾配が非常に緩やかな構造平野の低所を流れる掘り込み河道なので,大雨が降るとほぼ地形なりにゆっくりと浸水域が広がるという洪水を起こしています.最近では,2002年8月に中部ヨーロッパが総雨量の最大300mmという豪雨に見舞われ,ドナウおよびエルベがドイツ・チェコ・オーストリア・ハンガリーの各国で氾濫し,死者約100人,被災者数十万という洪水が起こっています.プラハ・ドレスデンなど河畔に位置する古都の歴史的建造物も浸水を被りました.

 急峻であり氷河に覆われたアルプス山地では,山地崩壊・地すべり・土石流・なだれなどの災害が発生しています.特異な災害例として,1963年のイタリア北部のドロミテにおける地すべりがあります.氷河のU字谷の中に3年前につくられた高さ260mのヴァイヨントダムの貯水により,土砂量2.4億km3の巨大地すべりが誘発され,大量土砂の滑落により跳ね上った湖水は,堤頂上を100mの高さで乗り越え,ダム下流の峡谷を深さ数10mの奔流となって流れくだり,約2600人の死者をだしました

 2003年8月,夏が温和な西岸気候の西ヨーロッパにおいて,平年よりも8~10℃高いという異常な高温が続きました.この熱波によりフランスで1.5万,ドイツで7千,スペインで4千,イタリアで4千など全体で3.5万人の死者がでました.熱波あるいは寒波による多数の死者発生は,大陸諸国でしばしば起こっています.熱波はまた森林火災を引き起こします.猛暑が続いた2010年夏,ロシアの中央部・西部において広範囲に森林火災が発生し,土中の泥炭にも燃え移り,鎮火するのに1ヶ月半近くかかりました.これにより多数の村落が焼失し,モスクワは有害な煙に覆われて死亡率が2倍にもなりました.

地震・火山災害

 地震災害は地中海東部の地域にほぼ限られます.1600年以降死者100人以上の地震は147回起こっています.マグニチュードは7前後までの直下型で,特にイタリアで集中的に発生します.イタリアでは1600年以降の死者数1000以上の地震は44回,25年に1回の頻度で起こっています.発生はイタリア中部・南部のアペニン山地域に集中し,石積み造りの建物が多いため死者が多くなっています.近年の地震では,南イタリアでのカンパニア地震(M6.9),死者4700人,被害額400億ドル,1908年シチリアでのメッシナ地震(M7.1),死者数11万,津波高さ11m,1805年ナポリ地震(M6.5),死者数6000などがあります.ギリシャでは1600年以降に死者数100以上の地震災害が36回起こっています.856年にはコリント地震の死者4.5万という大災害がありました.近年では1905年カルキジキ半島で死者数2000の地震が生じました.イタリア半島対岸のアドリア海沿岸でも地震活動が活発で,1963年スコピエ地震(M6.1)死者1000人が起こっています.

 歴史上有名な地震に1755年のリスボン地震(M8.5)があります.震源はポルトガル沖の大西洋で,プレート境界ではあるもののあまり地震は起こっていないところですが,地震の規模は巨大で死者は6.2万人でした.最大高さ15mの津波が被害を大きくしました.対岸のアフリカのモロッコ・アルジェリアでも数千人の死者がでました.

 大西洋中央海嶺上の島のアイスランドではM7クラスの地震が発生していますが,人口が少ないので被害は報告されていません.一方,火山活動は非常に活発です.マグマは玄武岩質であり割れ目状の火口から大量の溶岩が溢れ出す噴火を行います.厚い氷河に覆われているところで噴火して水蒸気爆発が生ずると,マグマは細かく粉砕されて大量の火山灰が噴きあがり,その降灰は農作物の減収をもたらします.1783年のラーキ火山の噴火では約1万人の餓死者がでました.火山灰が偏西風に運ばれヨーロッパを覆うと2010年のような航空機の広域運航不能などが生じます.大陸における噴火災害はイタリアで起こっています.よく知られているのはベスビオ火山の噴火で,79年には火砕流により南麓の街ポンペイが埋没しました.1906年には降灰により300人の死者がでています.




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