防災基礎講座
気象災害 地震火山災害 災害全般


19. 危険火山

日本の危険火山
 日本列島は沈み込みプレート境界にあるので,爆発的な噴火を行うマグマ化学組成の火山が多数分布します.活火山とは現在活動しているかあるいは将来噴火する可能性のある火山です.その判定は最近2000年間に活動したことを基準としており,総数で97(国後・択捉を除く)の火山あるいは火山群が活火山とされています..火山島は31あり,その半数は無人島です.これら活火山のうちの13を「活動的で特に重点的に観測研究を行うべき火山」,24を「活動的火山及び潜在的爆発活力を有する火山」に分類しています(図19.1 日本の活動的火山).御岳山は2万年も活動を休止していたのですが,1979年に水蒸気爆発を起こしました.史上最大の噴火は1815年のインドネシア・タンボラ火山の噴火ですが,この火山ではそれ以前の噴火は知られていませんでした.このように,活火山でないと言い切るのは容易ではありません.

  現在活発に活動し,また噴火の記録の多い火山は,危険な火山としてまず挙げられます(図19.2 日本の火山災害).桜島は世界でも最も活動的な火山で,頻繁に噴煙を高く噴き上げています.噴火の記録が最も多いのは浅間山と阿蘇山です.桜島と浅間山では噴石の危険が常にあるので,入山規制が行われています.阿蘇山には世界でも有数の大きなカルデラがあり,幾度も巨大噴火が起きたことを示しています(図19.3 阿蘇山のカルデラ).阿蘇山・中岳の553年の噴火は日本で最古の噴火記録です.噴火の記録がついで多いのは霧島山,伊豆大島,三宅島,有珠山などです.三宅島と有珠山はかなり等しい時間間隔で大きな噴火を繰り返しています.タンボラ火山の例のように,休眠期間が長いと噴火の規模が大きくなるという傾向があるとも言われており,近年の活動度だけからは危険程度を判断することはできないようです.

 最大の被害をもたらしており最も恐れられるのは火砕流です.火砕流発生の危険性は多くの火山で指摘されますが,過去の災害履歴や現在の活動度から,十勝岳,北海道駒ケ岳,有珠山,浅間山,雲仙岳,霧島山,桜島などが特に危険が大きいと判断されています.北海道駒ケ岳は1640年に,浅間山は1783年に,雲仙岳は1991年に大きな火砕流災害を起こしました.南九州のシラスのような火砕流台地を火山周辺に広げている大カルデラは,巨大火砕流がかつて起こったことを明らかに示します(図19.4 火砕流台地・カルデラと降灰域).日本における巨大火砕流噴火の発生は1万年に1回という稀な頻度ですが,ひとたび起これば広域が,例えば九州全域が壊滅するという超巨大災害が起こる可能性があります.

  山体崩壊による岩屑なだれ及び津波は,頻度は小さいものの多くの人命被害をもたらしている災害です.日本には山体崩壊をきわめて起こしやすい大型成層火山が数多くあります.一般に○○富士と呼ばれる火山は非常に崩壊しやすい山です.日本の火山の山麓には,30ほどの岩屑なだれ堆積層がみられます.そのうちの4例は最近400年の間に起こっています.これらは北海道駒ケ岳1640年,渡島大島1741年,雲仙岳・眉山1792年,磐梯山1888年です.北海道駒ケ岳では3回,八ヶ岳・鳥海山・岩手山では各2回起こったことが,馬蹄形カルデラや山麓の堆積層から知られています.海岸近くや島にあるため噴火津波を起こす可能性の大きい火山には,北海道駒ケ岳,渡島大島,雲仙岳,桜島などがあります.富士山の山体規模は特に大きいので,発生する崩壊と岩屑なだれの規模は巨大になるでしょう(図19.5 富士山の最近の火山活動).

  日本上空では偏西風が卓越するので,噴き上げられた火山灰は火山の東方に細長く伸びる範囲に堆積し,種々の混乱・障害を引き起こします.九州の火山でも噴火が大規模であれば,本州一円が大きな影響を受けます.数万年以上前の阿蘇山噴火による火山灰が10cmの厚さに堆積しているところが北海道においても見られます.富士山の噴火は首都圏に大きな降灰被害をもたらし,また東西の交通動脈に大きな障害をもたらすでしょう.火山がない都府県にも火山の災害は及びます
 

世界の火山災害
  1500年以降に発生した死者1,000人以上の噴火災害の回数は,インドネシアが13回と際立って多く,ついでフィリピン・日本・イタリア・西インド諸島が各3回,コロンビア・パプアニューギニアが各2回などです.これらはすべて爆発的噴火を行う沈み込みプレート境界にあり,イタリア以外は環太平洋火山帯の国々です(19.6 世界の火山災害).

   死者数の原因別割合は,火砕流(岩屑なだれを含む)32%,津波26%,火山泥流23%,降下火砕物6%,火山ガス1%などです.人的被害を発生させる主原因は,このように火砕流・火山泥流・津波です.大規模な降灰による広域の農作物被害が飢饉を惹き起こして餓死者を発生させるという2次的災害の死者も多く出ています.

  有史以来最大の噴火は,1815年のインドネシア・タンボラ火山の巨大噴火で,噴出物の総量150立方km(桜島火山の体積は40立方km),直接の死者は1.2万人でした.噴火のエネルギーは最大級の地震よりも2桁大きいものでした.発生した噴煙柱崩壊型火砕流は周囲の海に流入し,急速水冷による溶岩片の粉砕によって多量の細粒火山灰が生産され,これを含む巨大なリング状噴煙が立ち昇って周辺500km以内は闇夜の状態が3日続きました.多量の降灰により農作物は壊滅したため,8万人の餓死者が出ました.日本では6300年前に鬼界カルデラがタンボラ火山と同じ規模の噴火を行い,火砕流は海を渡って100km離れた九州南部にまで達しました.やはり急速水冷による大量の火山灰(アカホヤ)は西日本を覆いました.これにより縄文文化に断絶が生じた可能性が指摘されています.

 最大の火砕流災害は,カリブ海にあるマルティニク島・プレー火山の1902年噴火によるもので死者2.9万人,最大の火山津波災害はインドネシアのクラカトア火山の1883年噴火によるもので死者3.6万人,最大の火山泥流災害は1985年のコロンビア・ネバドデルルイス火山における災害で死者2.3万人です.プレー火山の火砕流は,体積500万立方m足らずの比較的小規模でしたが,山頂からの6kmのサンピエール市(人口2.8万)が,運悪く火砕流側面の火砕サージ域に入ったので,市街は全滅しました.雲仙岳・眉山の1792年の岩屑なだれと津波の災害(死者1.5万人)は,史上第5番目の災害です.火山災害の頻度は地震よりも1桁小さいのですが,巨大被害をもたらす大きな可能性があります. 

前頁次頁

(C)2006 独立行政法人 防災科学技術研究所 自然災害情報室