防災基礎講座
気象災害 地震火山災害 災害全般


17. 火山噴火

火山の分布
   マグマ(熱やガスも含む)が地表に噴出するのが火山噴火です.この噴出のしかたが爆発的であれば破壊力は強大で,噴石・火砕流・山体崩壊・爆風などさまざまな災害現象が生じ,大きな被害が引き起こされます.噴火が爆発的か否かはマグマの粘性やガス含有量などによって決まります.粘性などを大きくする化学組成をもつマグマは,沈み込みのプレート境界において形成されます.日本が位置する環太平洋域はほぼ全域沈み込み境界にあたり,火山噴火災害の危険が非常に大きい地帯です.

  マグマはマントルや地殻の岩石が融解温度(融点)に達して部分的に溶けることにより形成されます.融点は岩石の化学組成や圧力によって異なります.融点に到達する仕組みには,上昇に伴う圧力低下,水など融点を低下させる成分の混入,低融点岩石の高温物質との接触があります.溶けると周りの岩石よりも軽くなるので浮力を得て上昇し,密度が等しくなったところなどで停止してマグマ溜りを作ります.火山の直下では深さ1~10kmほどのところにマグマ溜りがあります.マグマがここから更に上昇して地表へ出てくるのが噴火です.火山は,このようなマグマの生成と上昇の条件が備わっているところに形成されます.

   地球上で火山が分布する地域は,プレートの生産・分離境界(大洋の海嶺軸,大陸の地溝帯),沈み込みプレート境界の陸側(島弧,活動的大陸縁),およびプレート内部に孤立したホットスポットです.生産・分離境界およびホットスポットはマントル内での大規模な対流の上昇部にあたり,圧力低下により低粘性の玄武岩質マグマが大量に生産されます.海嶺のほとんどは海面下ですが,これが海面上に出ているところがアイスランドです.ホットスポットの代表例はハワイ島で,ここには地球上で最大の火山があります(17.1 プレートとマグマ上昇域

   沈み込み境界では,海洋プレートによって持ち込まれる大量の水による融点降下,融点の低い大陸地殻(花崗岩質)への高温マグマの混入などによって,一般に高粘性の珪長質マグマが形成されます.火山は,沈み込んだプレートの深さが100~150kmに達したところの地表に帯状に出現します.海溝に最も近い火山を連ねると海溝軸に平行する線になり,これを火山フロントと呼びます.火山フロントと海溝の間には火山はありませんが,一方ここでは地震活動が最も活発です.(図17.2 世界の火山分布


噴火様式
   噴火の様式には大別して,溶岩の溢れ出し型(ハワイ式・ストロンボリ式)と爆発的噴火(プリニー式・ブルカノ式など)があります.(17.3 噴火の様式).この噴火様式はマグマの化学組成と密接に関係しています.マントル上部の溶融によって形成されるマグマは玄武岩質です.このマグマは1100~1200℃ほどの高温であり,珪酸含有量が30~40%と比較的少なくて,粘性率が小(水の数万倍程度)です. マグマの粘性率は温度が高いほど小さくなります.また,珪酸(シリカ)は重合して糸のようになり,網状の構造を作って高粘性になります.プレート生産境界およびホットスポットでは,低粘性の玄武岩質マグマが大量に噴出します.

 プレート沈み込み境界では,花崗岩質である大陸地殻物質の溶融やマグマ成分の部分的結晶化などにより,より低温(850~1000℃)で珪酸含有量の多い(60~70%),したがって粘性率の大きい(玄武岩質に比べ6~8桁大)珪長質マグマが形成されます.これが固化すると流紋岩や石英安山岩になります.珪酸含有量が50%ほどのものを安山岩と呼びます.日本の火山の70%が安山岩よりなります.

   マグマが地表近くまで上昇してくると冷却および圧力低下により結晶が次第に成長してきます.残りの液相の部分ではガス成分が多くなり,その発泡によってマグマ上部のガス圧が増大します.ガス成分の大部分は水で,これを多く含むマグマはガス圧が高くなります.高粘性であるとガス成分は容易には外へ逃げ出せません.したがって珪長質マグマではガス圧が高くなります.マグマが火口近くへ上がってきてガスの発泡が進み急激に体積を膨張させると,マグマ片とガスの混合物は火口から激しく噴出します(17.4 爆発的噴火).これによりマグマが細かく砕かれた物質(火砕物)が多量に放出され,また,山体の一部も破砕され,火砕流・爆風・岩屑なだれなどの激しい災害現象が引き起こされます(図17.5 セントヘレンズの1980年噴火).ただし,ガス成分が多くてもその脱出・分離(脱ガス)が効率的に進めば,爆発には至りません.この他のタイプの爆発には,マグマが火山体中の地下水や海水を熱し,急速気化させることによって起こる水蒸気爆発あるいはマグマ水蒸気爆発(マグマ自体も粉砕される)があります.

  火山は噴火の様式を反映した形に造られます.玄武岩質マグマの火山は溶岩が火口から溢れ出すという比較的穏やかな噴火を行い,低粘性の溶岩流は広く遠くまで広がってなだらかな盾状火山を造ります.ハワイ島の火山はその典型です.大量の溶岩が長い割れ目状の火口から溢れ出すと,広大な玄武岩台地が形成されます.爆発的噴火では,噴き上げられた火砕物が火口近くほどより多く降下・堆積する結果として,円錐火山が造られます.安山岩質マグマの場合,火砕物噴出と溶岩流出とが生じ,これが非常に多数回繰り返されて成層火山が形成されます.粘性率の非常に大きい石英安山岩質の場合で脱ガスが効率的に進むと,溶岩はほぼ固った状態のままで押しあがり,溶岩円頂丘が出現します. 

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