防災基礎講座
気象災害 地震火山災害 災害全般


11. 地震

プレートと地震
  地震は地殻内における断層運動によって起こります.断層とは岩盤や地層がある面を境にしてずれる現象です.地殻中に長時間かかって歪(ひずみ)が蓄積され,岩盤が耐えきれる限界を超えると断層というかたちでの破壊が生じます.蓄積されていた歪エネルギーは解放されて地震波となり,四方に伝わっていきます.これが地震です.

  地殻中に歪を大規模に発生させる主因はプレートの運動です.プレートとは地球表面を平均100kmほどの厚さで覆う硬い岩板で,大きさや形がさまざまな十数枚のプレートの存在が現在認められています.その境界の位置は,海溝などの地形や震源の分布から決められます.

  地球の内部はたまごのような構造を示し,白身にあたるのがマントルです.マントルは放射性物質の熱で温められて,ゆっくりとした対流を行っています.プレートは,マントルの対流により大量のマグマが上昇してくる海嶺において形成され,そこから両側へ分かれ対流に乗って水平移動し,やがて地球内部へ沈み込んでいきます.この運動でプレート同士がぶつかり合い,あるいはずれ合うと,大きな歪が生じて強い地震が発生します.歪の発生はプレート境界域に集中するので,帯状に連なる地震帯が出現します(11.1  プレート境界の種類と地震活動).

   世界の主要な地震帯には,太平洋を取り巻く環太平洋地震帯と,インドネシアから枝分かれしてヒマラヤを通り地中海へ続くヒマラヤ・アルプス地震帯があります.日本列島は環太平洋地震帯の北西部に位置し,ユーラシアおよび北米の両大陸プレートの下に,太平洋およびフィリピン海の両海洋プレートが沈み込んでいるという,複雑な地下構造のところにあたっています.沈み込みの場所が千島海溝,日本海溝,南海トラフなどです(トラフは浅い海溝).沈み込む際の押し合いにより日本列島はほぼ東西方向に圧縮され,大量の歪が引き続き発生して地震が頻発します(11.2 日本列島とその周辺のプレート

  マグニチュード8クラスの巨大地震は,主に海溝の陸側において起こります.これは沈み込みに直接伴って生ずるプレート境界の地震です.プレートの運動は陸域の地殻内にも歪を蓄積させ,内陸地震あるいは直下型地震を引き起こします(11.3 日本列島とその周辺の地震活動).


地震と断層
  日本列島のように強い圧縮力が作用しているところでは,断層の片側がずれ上がる逆断層と,横にずれ合う横ずれ断層が主に生じます.多くの場合これらは同時に起こって,斜め上方にずれます(11.4 断層の種類).断層が生じた範囲(断層面)の広さと断層ずれの量を掛けた値は,解放された歪エネルギーの大きさ(地震の規模)を示します.マグニチュード(M)が 8の地震では断層の長さが100kmでずれの量が6m,M7で30kmおよび1.5mというのが日本における内陸地震の断層の平均的な大きさです.

   本震後のほぼ24時間以内の余震域は断層面におよそ一致するので,余震の震源の分布から断層面の位置と形が分かります(11.5 1995年兵庫県南部地震の余震分布).これは,主断層によって生じた局所的な歪を解消するために起こるのが余震であるという理由によるものです.震源は一般に断層面の端の方にあります.断層破壊は震源から始まり,秒速3kmほどの速度で破壊は進行します.破壊の開始から終了までの時間はM8で30~40秒程度です.したがって,強い震動が続くのはほぼ1分以内です.ただし,軟らかい地盤では揺れがより長く続きます.地震波は断層面の全体から放出されます.震源という一点からではありません.

  マグニチュードの大きい地震や震源の浅い地震では,断層面が地表に達して地表面にずれを起こします.これを地震断層といいます.1995年兵庫県南部地震では淡路島で延長9km,縦ずれの最大が2.1m,横ずれの最大が1.2mの地震断層が出現しました.1891年の濃尾地震(M8.0)による地震断層は落差の最大が6mにも達しました.断層は長期間繰り返して運動するので,1回の変位量は小さくても積算されると地形に大きな連続的くい違いを作り出します.このような地形を主な手がかりにして活断層の存在が認定されます(11.6 活断層を示す地形).

   活断層とは,地表に現れている断層で,最新の地質時代(第四紀と呼ばれ,およそ170万年前以降)に繰り返し活動し,今後も活動すると推定される断層です.断層がいま動きつつあるのではありません.また,地表に達していない断層は,活動を続けていても活断層として把握できません.活断層の活動は内陸地震(直下型地震)を引き起こします.その活動は数千年に1回の頻度です.一方,海溝近くの海底下で起こるM8クラスのプレート境界地震は,およそ100年に1回というより大きな頻度で起こります.これまでに被害を引き起こした地震の震源を調べてみると,M7以上では全体の70%が海域で起こっています(図11.7 被害地震の震央分).内陸の被害地震で,既存の活断層が活動したものとは認定できないものが半分程度あります.


地震波
   震源断層から放出される地震波には,P波(縦波),S波(横波),表面波があります.このなかでS波が最も強い揺れを示します.地下深部岩盤での地震波速度は, P波が5~6km/秒,S波が3~4km/秒です.地表面を伝わる表面波の速度は3km/秒程度です.最も先行して伝わるP波と少し遅れてやってくるS波の到達時間の差(初期微動継続時間)により,震源までの距離が求められます(11.8 兵庫県南部地震の地震記録).震源の位置は,この時間差を多数の地点で観測して決められます.遠方の強い地震では遅れてやってくる表面波により揺れが長く続きます.

   最初のガタガタという揺れ(P波)を感じたら,次にグラグラという大きな揺れ(S波)が来るまでの時間を秒で計り,これに6~9程度の値(地域によって異なる)を掛けるとkm単位での震源距離が求められます.P波は進行方向に揺れる縦波で,通常,ドンと突き上げる上下動が最初に来ます.この最初の揺れが大きいと,強い横揺れがすぐにやってくる恐れがあるので,とっさに身の回りにある危険(転倒物,落下物など)を避ける行動を起こす必要があります.

  地震のエネルギーを表すマグニチュードは,地震計で記録された地震波形の最大振幅から求められます.場所ごとに異なる震度とは違って,マグニチュードは一つの地震に一つだけです.ただし,使用する地震波や震源距離を求める方法の違いなどにより,同一の地震でもマグニチュードは多少異なった値として求められています.マグニチュードは対数を使って表される値です.マグニチュードが0.2大きいとエネルギーはほぼ2倍に,1大きいと32倍に,2大きいと1,000倍にもなります. 

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