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メールマガジン「自然災害情報の収集・発信の現場から」

メルマガ「自然災害情報の収集・発信の現場から」No.31(2012年12月13日発行)

◆全国で続いていた降雪も,冬型の気圧配置が緩み収まるようです. 毎年,雪の被害が多発しています.屋根雪を下す際や軒下の落雪には,十分ご注意ください. 防災科研では,落雪の実験映像を公開しています.ぜひ,ご参照ください.

★このメールマガジンはご自由にご転送ください.災害研究や防災に関心のある方々との情報交換の場にしたいと考えております.セミナー・シンポジウム などイベント情報,本や論文の紹介と書評など,読者の皆様に役立つ情報はで きる限り掲載しますので,ぜひ情報を< dil_melmaga@bosai.go.jp >までお寄 せください.

CONTENTS

災害発生地の今昔 アウターライズ地震と昭和三陸地震津波

◆2012年12月8日17:18(JST)の地震

2012年12月8日17:18,三陸沖を震源とするMj7.4の地震が発生しました. 青森県八戸市など9つの市町村で最大震度5弱を観測し,研究所のあるつくば市天王台でも震度4を観測しました. この地震で,自然災害情報室では書架から蔵書の一部が落下し,石膏ボードの壁に若干のひびが入りました. 当初はアウターライズ地震(用語解説は東大地震研HP(2012)をご参照ください)と発表されましたが, その後の解析でもう少し複雑な地震であるとされています.

◇用語解説
◆アウターライズ地震の過去の事例

アウターライズ地震の代表例として,1933年昭和三陸地震が挙げられます.そこで今回は昭和三陸津波についてご紹介します.

◇昭和三陸地震津波

◇過去の教訓
昭和三陸津波は,1896年明治三陸地震の教訓が生きた地域と,そうではない地域が明確に分かれた自然災害でした.

岩手県大船渡町(現・大船渡市)では,地震の直後から消防が津波からの避難を促しました. 岩手県吉浜村本郷(現・大船渡市三陸町吉浜)では,他地域から移動してきた低地に住んでいた人々を除き,村民の被害は免れました(山下2008). 吉浜村では1896年明治三陸地震津波で全戸流失し,死者300名以上の被害が出ました. そのため,村長を中心として集団で高地移転を実施し,元の住宅地は全て田畑に土地利用を変化させました. 集落は現地復帰せず,昭和三陸地震の際,津波の被害から免れました.

一方で,岩手県唐丹村本郷(現・釜石市唐丹町本郷)では,1896年明治三陸地震津波で300戸中105戸が流失し,325名が死亡,生存者は15,6名でした. その後,高地移転を試みましたが,1913年の山地火災で10名が死亡したため,1戸を残して元の低地へ集落を再興しました. 1933年昭和三陸地震津波では,102戸中101戸,620名中325名が死者・行方不明者となりました(山口1943). その後,唐丹村本郷は高地移転を実施しました.現在では明治三陸地震,昭和三陸地震と東日本大震災の津波記念碑がたてられています.

また,岩手県重茂村姉吉(現・宮古市重茂)も同様で,1896年明治三陸地震津波では12戸中全戸流失,生存者は2名でした. その後,11戸まで集落が回復しましたが,1933年再び全戸被災,89名が死亡し,生存者は4名でした. 姉吉ではこれを契機に,村の神社ともども高地移転をしました(山口1943). 現在では,昭和三陸地震と東日本大震災の津波記念碑が津波到達地点に設置されています.

例に挙げたような集落の被害は,1933年当時,集落の構成員が津波未経験者であったことが要因と考えられています(山口1943,山下2008). 三陸地域では,明治三陸地震津波後被災した家の再興するために,親戚やその家の幼い子供などが家を継ぎました. 彼らの多くは津波を免れた人々で,津波の経験がうまく地域に伝わらなかった結果,同じ地域が再び被害に遭ったと推測されます.

◇津波体験の風化を防ぐ啓蒙手段としての津波碑
当時の地震学者である今村明恒は,津波体験の風化を防ぐために「津波記念碑」を利用することを提案しました(山下2008). 従来,三陸地域では明治三陸地震津波の津波碑が建設されていましたが,慰霊碑としての意味合いが強いものでした(北原2011). 一方,昭和三陸地震津波の津波碑は,津波体験の風化を防ぐ啓蒙手段を目的として建設がすすめられました. 多くの津波碑は,東京朝日新聞社からの義捐金を建設費に充当し,津波碑の設置を各地域へ配分されました. 石碑には,「地震があったら津波の用心」など後世への警句や地域の被害状況が刻まれていす. 二度の集落被害に遭遇した姉吉の津波碑は「ここより下に家を建てるな」と刻まれ,災害の悲惨さを今に伝えています.
(鈴木比奈子)

◇三陸沿岸の津波碑データ <参考文献>

図書館探訪―災害資料を訪ねて― (その12) <国際的な津波警報体制の紹介>

◆遠地津波に関連して国際的な津波警報体制の記事を作成中,2012年12月7日に津波を伴う地震が発生したので, この津波について各地の津波警報体制が報じた内容を,英語ですが列挙してみました.後半で太平洋とインド洋の津波警報体制を紹介します.

□気象庁 遠地地震情報>北太平洋津波情報(Northwest Pacific Tsunami Advisory)
  • 12月12日現在,この津波は[latest information(最新情報)]ですが,次の警報が発生するとトップページではなくなりますので,その場合は[previpus information(前の情報)]をクリックしてください
□太平洋津波センター(PTWC)太平洋
□太平洋津波センター(PTWC)Hawaii
□西海岸/アラスカ津波警報センター(WC/ATWC)
インド津波早期警報センター(ITEWC)
◆国際的な津波警報体制の紹介

□太平洋
北太平洋の中央に位置するハワイは,太平洋のあらゆる地域からの遠地震津波の影響を常に受ける場所であり( http://ptwc.weather.gov/ptwc/hawaii.php )太平洋津波警報センター(PTWC)が置かれています.

1946年のアリューシャン地震による津波の被害を契機に,1949年アメリカはホノルル地磁気観測所内の施設に津波警戒システムを構築しました.これがPTWCの前身にあたります.

1960年のチリ地震では津波の情報を得ていたにも関わらず,ハワイでは警報が発令されても避難行動につながらず,日本では警報発令が津波到達後となり,被害が生じました(気象庁,1961). この地震後,国際的な津波警報体制の構築を目指し,UNESCOの政府間海洋学委員会 (IOC)下部組織として,太平洋津波警報システム国際調整グループ (ICG/ITSU,現ICG/PTWS) が1968年に設立され, それを受け前述の組織が太平洋津波警報センター(PTWC)に改組されました.

PTWCは加盟国に津波警報を提供しています.また,インド洋,カリブ海の津波警報もサポートしています.北太平洋は更に細分され,対象地域を限定したより詳細な津波情報を提供をしています.

【参考文献】

□インド洋
2004(平成16)年12月26日のインド洋大津波の後,太平洋をモデルにインド洋津波警戒・減災システムのための政府間調整グループ (ICG/IOTWS:Intergovernmental Coordination Group for the Indian Ocean Tsunami Warning and Mitigation System)が設立され,インド洋における津波警報体制構築の取り組みが進められてきました.

気象庁やPTWC等国際的な協力の下,2011年10月23日からインド洋における津波警報体制が正式に運用を開始し, オーストラリア気象局,インド国立海洋情報センター,インドネシア気象・気候・地球物理庁の3機関が津波情報の発表を行うことになりました(気象庁2011).

この体制が軌道にのるまでの間,気象庁,PTWCからも暫定的にインド洋津波監視情報を提供しています.

【参考文献】

(堀田 弥生)

読者からの情報提供コーナー

◆1.17ひょうごメモリアルウォーク2013の参加者募集について

阪神・淡路大震災から18周年を迎える2013年1月17日(木)に,交通機関が途絶した大震災時の追体験を行い,風化しがちな防災意識を新たにするとともに, 来るべき災害に備えるため,震災モニュメント巡りや緊急時の避難路,救援路として整備されている山手幹線等を歩く 「1.17ひょうごメモリアルウォーク2013」を実施します.多くのご参加をお待ちしています.
http://web.pref.hyogo.jp/press/20121109_2c7d3aac00104e8c49257ab100065d88.html
1.主催
ひょうご安全の日推進県民会議〔会長(兵庫県知事)井戸 敏三〕
2.実施日
2013年1月17日(木)
3.実施内容
(1)一般ウォーク
阪神・淡路大震災時を思い起こしながら緊急時の避難路等を歩き,風化しがちな防災意識を新たにするとともに,震災の経験と教訓を次世代に伝える.
【東15kmコース】集合:西宮市役所(受付:7:30,出発:8:00)
【東10kmコース】集合:芦屋市川西運動場(受付:8:00,出発:8:30)
【東2kmコース】集合:王子公園(受付:10:00,出発:11:00)
【西15kmコース】集合:須磨海浜公園(受付:7:30,出発:8::00)
【西10kmコース】集合:県立文化体育館(受付:8:00,出発:8:30)
【西5kmコース】集合:神戸市立中央体育館(受付:9:30,出発:10:00)
※ゴールは全てHAT神戸
(2)帰宅訓練ウォーク
事務所・学校などの単位で,災害時帰宅困難者の徒歩帰宅訓練を目的として,事務所等からHAT神戸・なぎさ公園までを,上記東西6コースの範囲内で実施します.
(3)ゴール会場での催し
①1.17のつどい
会場:人と防災未来センター 慰霊のモニュメント前(神戸市中央区脇浜海岸通1丁目5-2)
時間:11:50 - 12:30(献花は,17:00まで実施)
内容:黙とう,献唱,1.17ひょうご安全の日宣言,献花など
②交流ひろば・ステージ
会場:なぎさ公園(人と防災未来センター南側)
時間:10:30 - 15:00
内容:防災啓発展示,炊き出し,ミニコンサートなど
③防災訓練
会場:なぎさ公園
時間:13:00 - 15:00
内容:参加型防災訓練,海上防災訓練の見学など
※1 雨天の場合
雨天でも実施しますが,神戸市,芦屋市,西宮市に,暴風,大雨,大雪警報が発令された場合は,催しを中止します. 中止する場合は,ラジオ関西で午前5:59及び午前7:59に中止する旨を放送するとともに,ひょうご安全の日公式サイトに掲示します.( http://www.19950117hyogo.jp )
※2 携帯ラジオを持って参加していただくと,休憩所やゴール会場でウォーク中継や,イベント情報などをお楽しみいただけます.
※3 1月17日は,人と防災未来センターを無料開館しています.
4.参加費 無料
5.申込方法
所定の参加申込書により,郵送またはFAXで下記7.の問い合わせ先へお申し込みください.また,上記公式サイトからも直接お申し込みいただけます.
6.申込締切
(1)一般ウォーク:2013年1月11日(金)
(2)帰宅訓練ウォーク:2012年12月21日(金)
7.問い合わせ先
ひょうご安全の日推進県民会議事務局
〒650-8567
神戸市中央区下山手通5丁目10-1兵庫県復興支援課内
電話 078-362-9984 FAX 078-362-4459・9876

■その他学術イベント情報は下記のサイトをご覧ください
独立行政法人 科学技術振興機構 SciencePortal
http://scienceportal.jp/index.html

防災コラム <防災科学の基礎知識>

第三十一回 河川堤防の高さの決め方

河川堤防は古い歴史をもち最も重要な治水構造物です.わが国では堤防により 洪水を河道内に閉じ込めて海に流し出すという快疎方式を基本的に採用してお り,とくに明治以来,連続する高堤防の築造を営々と続けてきました.

堤防など治水施設の規模・配置を決める河川計画の出発点は,河川の重要度の 設定です.これは豪雨の再現期間(あるいは超過確率)で与えられます.重要 度は,A級(再現期間200年以上),B級(100年~200年),C級(50年~100 年)D級(1年~50年),E級(10年以下)に5区分されています.A級には,利 根川,石狩川,北上川,信濃川,木曽川,淀川,筑後川など主要大河川や大都 市圏の河川の主要区間が入っています.

再現期間が例えば100年とされた場合,流域内における長期間の雨量観測デー タを統計処理して,100年に1回の確率規模の日雨量(利根川のような大流域河 川では3日雨量)を求めます.次にこの日雨量を各時間にどのように配分する かを,過去の代表的豪雨のデータに基づいて決めます.これは同じ日雨量でも 短時間に集中しているかそうでないかを決めるものです.

このようにして計画降雨(想定豪雨の1時間雨量の時間経過)が決まると,こ の雨の流出により代表河道地点において流量がどのような時間経過で出現する かを流出計算で求めます.こうして計画の中心となる想定洪水の流量の時間経 過を示すハイドログラフ(基本高水)が決定されます.ここで基本高水ピーク 流量が最重要の量であり,これを上流部ダムと河道とで分担して受け持たせ, その割合を総建設費用が最小になるといったような方法により決めます.過去 の洪水の流量がより大きい場合にはこの既往最大流量のほうを採用します.利 根川本川では,基本高水ピーク流量毎秒22,000 m3(八斗島地点)のうち5,500 m3を,上流に造られている6ダムなどで調節する計画になっています.

次に,河道を流下する分の流量を氾濫させずに海にまで流すためには,堤防の 高さを各地点でどのようにとったらよいかを,計算を繰り返しながら順次決め ていきます.水位が高くなりすぎる場合には河幅を広げる,河床を掘削する, 遊水地や放水路を造るなどにより水位を低下させます.利根川では鬼怒川との 合流個所付近の3調整池で5,000 m3を調整する計画になっています.また,最 大支流の渡良瀬川の洪水は広大な渡良瀬遊水池により全て調節される計画にな っています.

こうして各地点での計画高水位(想定洪水の最高水位)が決まれば,それにあ る余裕高を加えた高さ(0.5~1m)の堤防を造るはこびとなります.堤防の幅 は,高水位の水圧に耐え,また,浸透水が浸み出さないように,高さの2~3倍 にとられます.表のり面はコンクリート張りなどのり覆工を施工して浸透を防 ぎ,また洪水流による侵食を防ぎます.基礎には根固め工を設けて洗掘を防止 します.

このように治水の計画は,重要度の設定という政策的判断を基礎としています. また技術的計算の過程でも,どの期間や場所の雨量観測データを使うか,どの 豪雨例を採用するか,どの計算式を使用しそれにどのような係数や条件を与え るかなど,裁量に委ねられる事項がいくつもあるので,同じ再現期間から出発 しても,計算によって出てくる最大洪水流量はかなりの幅を持つことになりま す.また,これに基づいて建造される施設だけでは防ぎ得ない規模の洪水が, ある確率で存在するということを明らかな前提にしています.

治水施設に限らず,防災の施設・構造物はすべてある一定の外力規模を設定し て,その強度・規模の上限を決めています.この自然外力の規模には原理的に は上限はないので,ある判断に基づいて一定の安全限界を設定し,それを超え る場合のリスクは許容することになります.この安全水準はリスクの大きさや 費用対効果などに基づいて政策的に決定され,なんらかの社会の合意のもとに 実行されています.既往最大規模という設定は広くおこなわれていますが,既 往最大が更新されるのはしばしばです.科学的な安全の保証といったものはあ りえないのです.

河川堤防の場合,再現期間が最大でも200年という決して高いとはいえない水 準が設定されています.これには経済的な要因が大きな制約の一つになってい ると思われます.したがって,ある計画規模の治水施設がつくられないと危険 だ,つくられれば安全になるといった議論はほとんど意味のないことです. (水谷 武司)

編集後記

◆2012年もあと2週間ほどで終わります.今年度もメールマガジンをご講読いただき,ありがとうございました.来年度もどうぞよろしくお願いいたします.

発行 防災科学技術研究所 自然災害情報室

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