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メールマガジン「自然災害情報の収集・発信の現場から」

メルマガ「自然災害情報の収集・発信の現場から」No.30(2012年09月06日発行)

2012年9月1日で関東大震災より89年が経過しました.自然災害情報室では,8月31日より「1923年関東大震災企画展」を開催し,希少な資料の実物を公開しています.そこで,今号は関東大震災の関連資料について特集します.

★このメールマガジンはご自由にご転送ください.災害研究や防災に関心のある方々との情報交換の場にしたいと考えております.セミナー・シンポジウム などイベント情報,本や論文の紹介と書評など,読者の皆様に役立つ情報はで きる限り掲載しますので,ぜひ情報を< dil_melmaga@bosai.go.jp >までお寄 せください.

CONTENTS

特集 1923年9月1日関東大震災

◇自然災害情報室では,2012年8月31日より9月20日の平日,午前10時から午後 5時までの期間,「1923年関東大震災企画展」を開催しています.また,企画 展に連動して「1923年関東大震災企画展」インターネット特別展のWebページ を開設しました.
「1923年関東大震災企画展」Webページ http://dil.bosai.go.jp/disaster/1923kantoeq/

今回は,関東大震災の概要と,「1923年関東大震災企画展」Webページで掲載している資料の一部をご紹介します.

◆大正関東地震の概要

大正関東地震の発生により,現在,関東大震災と呼ばれる未曾有の大災害が引き起こされました.

大正関東地震は,南風が吹く土曜日のお昼時に発生しました. 震度記録(*)によれば,東京都大手町,神奈川県横須賀市,千葉県館山市,埼玉県熊谷市,山梨県甲府市で震度6を記録しています. また,中央防災会議 災害教訓の継承に関する専門委員会(2006)では,神奈川県平塚市,茅ケ崎市から房総半島の千葉県館山市にかけては震度7に達した可能性が高いとなっており, いずれも非常に強い揺れが関東地方を襲いました.このため広い範囲で建物被害が発生しました.

市街地では火災の延焼により,広い範囲で被害が発生しました. 地震発生時刻がお昼時であったため,炊事に使用されていたかまどや七輪からの火が出火原因の50%以上を占めました. また,火災旋風が発生し,被服廠跡(現・東京都横網町公園)では,約3万8千人が犠牲となりました.

この地震によって,神奈川県をはじめ多くの土砂災害が発生し, さらに,その後の雨によっても土砂災害が発生しています. 液状化も発生し,特に埼玉県の中川低地などで,顕著な液状化の被害がありました.

相模湾沿岸部では津波の被害もありました.本震発生から10分後に津波の第1波が襲来し,静岡県熱海で12m,千葉県館山市では9mの津波が到達しました.

(*)気象庁では1925年以前の地震の震度について,震度データベースに収録されていないため,地震報告・地震年報・気象要覧(中央気象台)から,データを掲載している. この期間の震度は,微・弱・強・烈の階級で記載しているため,これに対応する震度を,1~6におきかえて表現している(気象庁2012). なお,当時の対応震度は宇佐美(2003)p8「表2-3A震度観測の変遷」に詳しい.

◆展示資料の紹介

首都に壊滅的な被害をもたらした関東大震災には,様々な資料が残されています. 自然災害情報室では,これまでに収集した資料約200点(2012年9月現在)の全てを企画展で展示しています.その一部をご紹介します.

日本電報
http://dil.bosai.go.jp/disaster/1923kantoeq/denpo/
通信社から新聞社へのオリジナルの情報源です.これは調査の結果,希少な資料であることが判明しました.詳細は本号の「図書館探訪」をご覧ください.

帝都大震火災 飯田町驛焼燼之景(梁山画)
http://dil.bosai.go.jp/disaster/1923kantoeq/makimono.html
この資料は,東京都千代田区飯田橋三丁目にあった飯田町駅付近からの光景を描いた掛け軸です. 町が大規模な出火に巻き込まれていく様子が表現されています.(読み:ていとだいしんかさい いいだまちえき しょうじんのけい)

帝都大震火災系統地図
http://dil.bosai.go.jp/disaster/1923kantoeq/index.html
火災の出火元,延焼方向,延焼時間が記載されている地図です. 東京帝国大学罹災者情報局によって作成されました.

関東大震災 災害写真
http://dil.bosai.go.jp/disaster/1923kantoeq/hazardphoto.html
浅草十二階,外壁にせん断破壊が生じている丸の内東京會舘の写真をはじめ, 横浜海岸通りの地震後,火災が発生する前の写真,鎌倉市霊山ヶ崎(りょうぜんがさき)東側の斜面崩壊の写真などを掲載しています.

関東大震災 Web上で入手できる資料リンク集
http://dil.bosai.go.jp/disaster/1923kantoeq/link.html
Web上で閲覧できる関東大震災の資料のリンク集です.

◇現代の東京で,大正関東地震と同規模の地震が発生したら,どのような被害に見舞われるのでしょうか.

災害資料は,その時の災害の状況をありのままに表しています. 地震直後の通りに出ている人々の様子や損傷した都内のビル, 日本画に描かれた火災から家財道具を持って逃げる人々, 日本電報に記されているような情報の錯綜など,現代の私たちに通じるものがあると思います. Webで紹介している資料は所蔵している資料のごく一部ですが,この機会に是非ご覧ください.
(鈴木 比奈子)

「1923年関東大震災企画展」Webページ
http://dil.bosai.go.jp/disaster/1923kantoeq/

<参考文献>

図書館探訪―災害資料を訪ねて― (その11) <関東大震災関係 新発見資料紹介>

◆今回は当室で開催中の「1923年関東大震企画展」で最も注目している新発見の資料「日本電報」 (日本電報通信社大連支局 大正12年9月2-10日刊行)について紹介します.

■外観
表紙には日本電報の切り抜きのロゴが貼られ, 1923(大正12)年9月2日から9月10日までの複数日分の速報が右綴じで1冊に綴じられています. 用紙は163mm×240mmで,色紙もしくは白紙にガリ版刷です.

■概要
日本電報通信社(当時)(以下,旧電通)大連支局が受信し,中国大連の邦字新聞社に配信した9月2日~10日分の速報を綴じたものです. 現在の(株)電通(※)にも現存せず,新聞記事になる前のオリジナル情報であることや, 社内資料であり一般に出回る機会が少ないことから本資料の存在は希少といえます.

※1936年に日本電報通信社の通信部門を別会社に移譲,広告部門が現在の(株)電通となった.
http://www.dentsu.co.jp/vision/summary/history.html

■内容
ほとんどの記事が日本から発信された関東大震災に関連する情報です. 複数の支局から類似の内容を受信していることもあります. 火災や津波などの災害の様子,都市の混乱状況や皇族の安否,軍隊・警察による救援の情報や, 流言などが飛び交っています.また一部,欧州からの入電もあります. 多い日は1日81件を受信しています.

■ポイント
発信場所・日時が明記されており,情報の伝達の様子が分かります. 当時の大連は,数万人の日本人が居住する大きな町でした. 大きな邦字新聞社が3社あり,入電した速報は各新聞社へ即配信されたと考えられます.

★以下のHPで2~3日分のダウンロードできます.
http://dil.bosai.go.jp/disaster/1923kantoeq/denpo/index.html
一部読み下し文もあります.ぜひ,ご覧下さい.

□参考文献
(堀田 弥生)

読者からの情報提供コーナー

◆1.17防災未来賞「ぼうさい甲子園」の募集について
 阪神・淡路大震災の経験や,その後の様々な自然災害から得た教訓を生かし, 自然の脅威と生命の尊さや,共生の大切さを考える「防災教育」を推進し,未 来に向け安全で安心な社会をつくるため,児童・生徒等が学校や地域において 主体的に取り組む「防災教育」にかかる先進的な活動を顕彰する『1.17防災未 来賞「ぼうさい甲子園」』を実施することとし,下記により全国から公募しま す.今年度は,日常の備えとなる学校や地域での取り組みだけでなく,東日本 大震災において津波の被害が大きかったことから,「1.津波避難訓練や津波 対策の取り組み」,国語,理科,家庭科等の一般教科に防災を取り入れた「2. 教科教育の中での防災教育の取り組み」の2つのテーマを設け,特色のある取 り組みを表彰します.また,継続的にご応募いただいている学校・団体の表彰 も予定しています.
1.名称:1.17防災未来賞「ぼうさい甲子園」
2.主催:兵庫県,毎日新聞社,(公財)ひょうご震災記念21世紀研究機構(人と防災未来センター)
3.事業概要
(1)対象活動内容
学校や地域において,児童・生徒等が主体的に取り組む「防災教育」に関する先進的な活動
(2)対象部門
①小学校部門,②中学校部門,③高校生部門,④大学生部門
※応募は,学校,クラス,サークル等のグループ単位(他薦も可)
(3)選考
選考委員会で審査,決定
委員長:河田惠昭(人と防災未来センター長,関西大学社会安全学部教授・学部長)
(4)賞
ア ぼうさい大賞   各部門1点       (賞金20万円)
イ グランプリ    ぼうさい大賞の中から1点(賞金40万円)
ウ 優秀賞      各部門1点
エ 奨励賞      各部門数点
オ だいじょうぶ賞  数点
カ はばタン賞    数点
※ テーマ賞の選考を予定
1.津波避難訓練や津波対策の取り組み
2.教科教育の中での防災教育の取り組み
※継続応募校への賞の選考も予定
(5)募集期間
2012年6月15日(金)-9月30日(日)(消印有効)
(6)応募先
〒663-8201 西宮市田代町16-8 パルティーレN棟西号室
(特非)さくらネット内 ぼうさい甲子園事務局
電話0798-64-5829 ファックス0798-65-5254
メール bousai_koushien@yahoo.co.jp
(7)応募用紙の配布場所
兵庫県企画県民部防災企画局復興支援課(電話078-362-9984)
(公財)ひょうご震災記念21世紀研究機構 人と防災未来センター事業部普及課 (電話078-262-5060)
※インターネットでの入手は以下のページをご参照ください.
http://web.pref.hyogo.lg.jp/pa17/pa17_000000076.html
http://www.mainichi.co.jp/event/edu/bousai/
4.表彰式・発表会
2013年1月に神戸市内で開催予定

■その他学術イベント情報は下記のサイトをご覧ください
独立行政法人 科学技術振興機構 SciencePortal
http://scienceportal.jp/index.html

防災コラム <防災科学の基礎知識>

第三十回 災害による人口変化

 大規模な災害は,住宅の損壊,社会インフラの破壊・機能停止,商工業施設 の被災などによる居住不能,生活困難,就学障害,環境悪化,社会不安,操業 停止,失業・転職などによって被災地からの人口流出(地域人口の社会減)を もたらし,これによる地域経済活動低下はさらなる流出を引き起こします.僻 地の場合には過疎化が一層加速されます.この地域人口減の大きさは災害の社 会的インパクトの規模を集約的に示す指標になります.

年々の人口統計の推移にまで明瞭な落ち込みを引き起こすような災害は,とく に大規模な災害です.2011年東日本大震災では,岩手・宮城両県の津波被災市 町村の2011年末(災害の9ヵ月後)における人口減は3.4万人でした.これは津 波浸水域人口の9%,市町村全人口の2%にあたります.この人口減の80%は30 代以下の年齢層で,就業制約が主因であることを示します.

1995年阪神大震災では,災害1年後における人口減は,神戸市が3.5万人(市人 口の2.4%),西宮市が1.6万人(同3.9%)でした.人口流出がとりわけ著し かったのは関東大震災のときの東京市(15区,人口250万)で,震災1ヵ月後 における市域外への流出人口(長期避難者)は100万人にも達しました.全国 調査がおこなわれた2.5ヵ月後においても,66万人が全国各地に残留したまま でした.横浜市(人口53万)からの流出人口は2.5ヵ月において9万人でした.

2005年ハリケーン・カトリーナの高潮により市域の2/3が水没したニューオー リンズの人口は,災害の直後に45.4万人から15.9万人へと35%にまで減少し, 3年後の時点においても55%に回復しただけでした.ここは海面下にある高危 険地であって,災害前への人口回復を許してはならないところです.1959年伊 勢湾台風高潮により名古屋市は臨港域が水没し死者2千人などの大被害を被っ たのですが,市全体の人口には低下は全く認められませんでした.高度経済成 長の直前の時期で市の経済活力が高かったことが推定されます.

日本の人口に最も大きな変動を与えた災害は,江戸時代における冷夏災害です. 享保(1717~20),天明(1783~89),天保(1833~38)の冷害と病虫害によ る飢饉は最も厳しいものであって,日本全体の推定人口の推移に認められる大 きな落ち込みから,それぞれ100万人ほどの死者(多くは餓死)がでたと推定 されます.この数値は人口純減を示すものですが,被害が甚だしかった東北地 方からは,居住の自由はなかったものの,多数の流民が江戸などに流れ込んだ と想像されます.

人口減少数と住家損壊(全壊・焼失)数とは高い相関を示します.関東大震災 や阪神大震災により被災した市区単位のデータでみると,災害の約1年後にお ける人口減少数は住家損壊数にほぼ比例します.これと同じ関係は死者数と住 家損壊数との間にも成り立ちます.地震火災においても出火率と全壊率との間 に比例関係があり,出火予測に利用されます.住家損壊の規模は災害全体の規 模を決める基本要因です.都市人口の明らかな減少が認められた自然災害例は 少ないのですが,戦災(空襲)では多数あります.この場合にも人口減少数と 住家損壊数との間には震災の場合と同じ式が成り立ちますが,その比例定数は 約2.5倍です. 

地域外への流出者は日本の各地に離散します(関東大震災では大陸にも).都 道府県ごとで示す離散者数は,被災地からそれぞれの地域までの距離にほぼ逆 比例し,流出先人口にほぼ比例します.これは重力モデルが適合することを示 しますが,その比例定数(重力定数)には地域間の親近関係の程度を示す地域 差が認められます.阪神大震災では,西日本の係数は東日本の5倍で,中国・ 四国・九州により多くの人口が流出しました.関東大震災では,西日本の係数 は東日本の半分,北陸は東日本の2倍でした.突発的な災害時には,親戚・知 人の多い出身地にとりあえず身を寄せることが多いので,地域間の親近関係が よく表れ出てきます.

災害後の人口回復の速度は,地域の活力(経済成長力など)を反映します.回 復の時間経過は一般に,災害前の変化(増加あるいは減少)率で変化する部分 と,災害により減少した人口の未回復部分に比例して回復する部分の和になり ます.この結果災害後の人口回復は,以前の変化の趨勢を延長した線に次第に 漸近していく指数関数的な曲線で示されます.インパクトの規模が非常に大き いと,以前の趨勢に到達しないまま定常的な変化の状態に入り,未回復分が残 されたままになります.大きな災害危険地であれば以前のレベルへの人口復帰 は制約されねばなりません.
(水谷 武司)

自然災害情報室からのお知らせ

(独)防災科学技術研究所 自然災害情報室では以下のイベントを開催しています.皆様,是非一度ご覧ください.

「1923年関東大震災企画展」(開催:2012年8月31日~9月20日)

発行 防災科学技術研究所 自然災害情報室

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