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メールマガジン「自然災害情報の収集・発信の現場から」

メルマガ「自然災害情報の収集・発信の現場から」No.29(2012年07月13日発行)

熊本県阿蘇市阿蘇乙姫では7月11日01時から7月12日10時までの総雨量が507mmを超えました.亡くなられた方へのご冥福をお祈りいたしますとともに,被災された方へのお見舞いを申しあげます.

★このメールマガジンはご自由にご転送ください.災害研究や防災に関心のある方々との情報交換の場にしたいと考えております.セミナー・シンポジウム などイベント情報,本や論文の紹介と書評など,読者の皆様に役立つ情報はで きる限り掲載しますので,ぜひ情報を< dil_melmaga@bosai.go.jp >までお寄 せください.

CONTENTS

災害発生地の今昔 <熊本水害>

7月12日の未明~朝,熊本県の熊本・阿蘇地方地方を中心に108mm/1h,288.5mm/3hの猛烈な雨を阿蘇乙姫で観測しました.0-9時までには492.5mmを観測しました.これは7月平均降水量の8割を超える記録的な大雨です.

また,大分県竹田でも,同0-15時までに251mmを観測しています(以上,福岡管区気象台災害時気象資料より).

これらの豪雨は熊本県の白川や,大分県の玉来川等で氾濫を引き起こしています.日本列島付近には梅雨前線が停滞し,今後も災害の危険性がありますので,防災情報に注意しましょう.

速報として,熊本・大分地方の防災情報掲載サイトと過去の水害についてご紹介します.

◆防災情報掲載サイト
◆熊本地方の既往水害情報

この時期は,毎年のように豪雨災害が発生する災害多発期です.この地方の既往水害の例として平成2(1990)年の水害と,古くなりますが,白川の既往最大水害であった昭和28(1953)年水害について,ご紹介します.

◆平成2(1990)年7月豪雨水害

九州地方を中心に大きな被害があり,阿蘇山周辺などで死者27人を出しました.阿蘇根子岳では流木を取り込み,破壊力を増した氾濫流により,一の宮町などで8人が亡くなりました.今回の阿蘇周辺の水害についても,山地地形に規定された様相を示す山地豪雨災害です.今号の防災コラム「山地河川洪水災害」もご参照下さい.

◆昭和28年西日本水害

1953年6月の梅雨前線豪雨(西日本水害)により、白川は市街域で大規模に氾濫しました.市全体の被害は死者286人,住家流失・全壊1,513戸など著しいものでした.

死者の大部分は谷底低地部において発生しました(防災基礎講座より引用).

◆平成2年7月豪雨水害・昭和28年西日本水害 NIED-DIL所蔵資料リスト

(堀田 弥生)

読者からの情報提供コーナー

◆第4回 GIS-Landslide and Natural Hazard 研究集会(4thGLM)
http://lsweb1.ess.bosai.go.jp/gis-landslide/
日程: 2012年7月27日(金)-28日(土)
主催: GIS-Landslide研究会
共催: 東北学院大学,(社)日本地すべり学会 東北支部,独立行政法人 防災科学技術研究所
会場: 東北学院大学 泉キャンパス(宮城県仙台市)

◆日本地形学連合JGU夏の学校2012 8/18-19開催
http://oguchaylab.csis.u-tokyo.ac.jp/jgusum2012/
日時:2012年8月18日(土)-19日(日)
会場:東京大学柏キャンパス 総合研究棟
主催:日本地形学連合,東京大学空間情報科学研究センター
講師:井口 隆(防災科学技術研究所),飯田智之(筑波大学)
参加費:JGU会員:学生 500円,一般 1,000円/JGU非会員:学生 1,000円,一般 2,500円
参加申し込み:要(インターネットで受付)

◆1.17防災未来賞「ぼうさい甲子園」の募集について
 阪神・淡路大震災の経験や,その後の様々な自然災害から得た教訓を生かし, 自然の脅威と生命の尊さや,共生の大切さを考える「防災教育」を推進し,未 来に向け安全で安心な社会をつくるため,児童・生徒等が学校や地域において 主体的に取り組む「防災教育」にかかる先進的な活動を顕彰する『1.17防災未 来賞「ぼうさい甲子園」』を実施することとし,下記により全国から公募しま す.今年度は,日常の備えとなる学校や地域での取り組みだけでなく,東日本 大震災において津波の被害が大きかったことから,「1.津波避難訓練や津波 対策の取り組み」,国語,理科,家庭科等の一般教科に防災を取り入れた「2. 教科教育の中での防災教育の取り組み」の2つのテーマを設け,特色のある取 り組みを表彰します.また,継続的にご応募いただいている学校・団体の表彰 も予定しています.
1.名称:1.17防災未来賞「ぼうさい甲子園」
2.主催:兵庫県,毎日新聞社,(公財)ひょうご震災記念21世紀研究機構(人と防災未来センター)
3.事業概要
(1)対象活動内容
学校や地域において,児童・生徒等が主体的に取り組む「防災教育」に関する先進的な活動
(2)対象部門
①小学校部門,②中学校部門,③高校生部門,④大学生部門
※応募は,学校,クラス,サークル等のグループ単位(他薦も可)
(3)選考
選考委員会で審査,決定
委員長:河田惠昭(人と防災未来センター長,関西大学社会安全学部教授・学部長)
(4)賞
ア ぼうさい大賞   各部門1点       (賞金20万円)
イ グランプリ    ぼうさい大賞の中から1点(賞金40万円)
ウ 優秀賞      各部門1点
エ 奨励賞      各部門数点
オ だいじょうぶ賞  数点
カ はばタン賞    数点
※ テーマ賞の選考を予定
1.津波避難訓練や津波対策の取り組み
2.教科教育の中での防災教育の取り組み
※継続応募校への賞の選考も予定
(5)募集期間
2012年6月15日(金)-9月30日(日)(消印有効)
(6)応募先
〒663-8201 西宮市田代町16-8 パルティーレN棟西号室
(特非)さくらネット内 ぼうさい甲子園事務局
電話0798-64-5829 ファックス0798-65-5254
メール bousai_koushien@yahoo.co.jp
(7)応募用紙の配布場所
兵庫県企画県民部防災企画局復興支援課(電話078-362-9984)
(公財)ひょうご震災記念21世紀研究機構 人と防災未来センター事業部普及課 (電話078-262-5060)
※インターネットでの入手は以下のページをご参照ください.
http://web.pref.hyogo.lg.jp/pa17/pa17_000000076.html
http://www.mainichi.co.jp/event/edu/bousai/
4.表彰式・発表会
2013年1月に神戸市内で開催予定

■その他学術イベント情報は下記のサイトをご覧ください
独立行政法人 科学技術振興機構 SciencePortal
http://scienceportal.jp/index.html

防災コラム <防災科学の基礎知識>

第二十九回 山地河川洪水災害

 起伏の大きい山地に豪雨が降ると,山崩れや土石流などによる土砂災害に加え,激しい流れの洪水による水害が発生します.流水が建物や人などに加える力(流体力)は,水深hと流速vの2乗との積hv2に比例します.水流の流速は水深の2/3乗と地形勾配の1/2乗との積に比例するので,これらを組み合わせて,流体力は水深のほぼ2乗に比例し,また流れの場の地形勾配に比例する,と表現することができます.水深の影響はより大きく,深い流れは強い押圧力を建物などに及ぼします.水深は建物が流れの力を受ける断面積の大きさを示すものですが,これはまた建物に加わる浮力にも関係しています.水深が深いと浮力も大きくなり,建物のような重い物体も少しでも浮き上がると容易に押し流されます.土台石の上に土台を置いただけの昔の建物は容易に浮き上がるので,かつては多くの流失被害が生じていました.

勾配の緩やかな開けた平野における洪水は,側方へ拡がって水深が小さくなるので建物を破壊するほどの力はなくなり,破堤口付近などを除きほぼ浸水を被るだけで済みます.これに対し山地内の谷底低地のような地形のところでは,側方への拡がりが制約されて水深は大きくなり,また地形勾配は大きいので,hv2の値は非常に大きくなって,流れの中の建物を押し流す力を持つに至ります.強雨により山地上流域で山崩れ・土石流が発生すると,多量の土砂や流木が運搬されてくるので,洪水流の衝撃力はさらに増大します.上流山地内で大きな山崩れが生じて土砂が谷を埋めると,堰き上げられた水が一気に流下して,下流の谷底低地に段波状の激しい洪水を起こします.山麓で谷が開けたところでも地形勾配は大きいので,谷出口直下では激しい流れが維持されます.出水は急速ですが水が退くのもまた速くて数時間ほどでほぼ元の河幅に戻り,後には土砂,流木,建物の残骸,流されてきた自動車などがうず高く積み重なります.

破壊力の大きい洪水を引き起こす限界の降雨強度は,谷底低地面の勾配,上流域面積,谷底幅といいた簡単な地形要因によって示され,危険度指標として与えることができます.一般に谷底低地面勾配が1/300よりも急なところで,多数の流失・全壊を出す激しい洪水が起こっています.

山崩れ土砂が流れを完全に堰き止めて土砂ダムが出現すると,その決壊による危険が恐れられていますが,谷埋積の延長が200mを超えるほどの場合には河床が上昇したとみたほうがよく,オーバーフローする流水は埋積土砂を激しく侵食するものの,土石流や段波状洪水を起こすおそれは小さいでしょう.

このように,勾配が大きく幅狭い谷底低地や山麓の谷出口付近では破壊力の大きい洪水流が発生します.多数の死者や家屋の流失・全壊を引き起こした河川洪水災害の大部分は,このような地形のところに位置する市街域で起こっています.なおこの場合の全壊は,経済的被害などの面からある水深以上の浸水を全壊や半壊とみなすといった判定によるものではなくて,文字どおりの直接的な物理的破壊です.

1947年カスリーン台風の豪雨により利根川は大破堤し,氾濫流は古利根川・中川沿いに60km流れて3日後に東京低地にまで達しました.これは史上最大規模の平野河川洪水で,流失271戸,全半壊1932戸など大きな住家損壊被害を引き起こしましたが,死者は58人でした.支流の渡良瀬川が足尾山地縁辺を流れるところにある急勾配谷底低地において,ほぼ同時に山地河川洪水タイプの氾濫が生じ,足利市で流失・全半壊957戸,死者319人,桐生市で流失・全半壊813戸,死者146人という大被害が発生していました.また岩手・一関市でもこのタイプの洪水が起こり,流失・全半壊1050戸,死者101人の大きな被害が生じています.平野大河川の氾濫は注目され,カスリーン台風となると利根川の破堤洪水が思い浮かべられるようですが,死者数でみれば総数1540の4%,住家損壊数では17%です.山地内・山麓では,激しい流れの洪水が局地的に激甚な被害を引き起こしているのです.

山地内河川の洪水を防御するハードの対策は,ダムの建造です.狭い谷底であるので高い堤防をつくる余地はほとんどありません.しかし,ダムは一般に利水を兼ねていて,できるだけ水を貯めておこうとしているので,洪水を調整する能力には限界があります.また,満水位近くになったら放流せざるを得ないので,これが危険をもたらします.周辺山地内に降った雨水はすぐに谷底内に流出してくるので,河川水位の上昇は急速です.したがって警報・避難の態勢が,他のタイプの洪水に比べ格段に重要です.ただし避難行動を行う場合には,同時に山地側からの土砂災害の危険にも注意を向けねばなりません.谷底の側面に分布することの多い段丘面上が,比較的安全な居住地です.洪水ハザードマップでは浸水域と水深区分を示しているのがほぼ総てですが,流体力など洪水流の及ぼす力の大きさは,これと同等あるいはそれ以上に重要な危険情報です.
(水谷 武司)

発行 防災科学技術研究所 自然災害情報室

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