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メールマガジン「自然災害情報の収集・発信の現場から」

メルマガ「自然災害情報の収集・発信の現場から」第21号(2011年10月13日発行)

◆通常より遅くなりましたが,メールマガジン第21号をお送りいたします.台 風12号災害から1ヶ月が経過しました.亡くなられた方へのお悔やみと,被害 に遭われた方へのお見舞いを改めて申し上げます.

◆今回の台風12号災害の調査写真を一部Google Mapsで試験公開しました.
http://maps.google.co.jp/maps?q=http://dil.bosai.go.jp/disaster/2011H23T12/201109H23T12.kml
(クリックして開けない場合,URLをブラウザのアドレスバーに貼り付けてご覧ください)

★このメールマガジンはご自由にご転送ください.災害研究や防災に関心のあ る方々との情報交換の場にしたいと考えております.セミナー・シンポジウム などイベント情報,本や論文の紹介と書評など,読者の皆様に役立つ情報はで きる限り掲載しますので,ぜひ情報をお寄せいただきたいと思います. < library@bosai.go.jp >までお願いします.

CONTENTS

災害発生地の今昔 <平成23年台風第12号による災害>

今回は2011年8月30日から9月6日にかけて発生した平成23年台風12号による災 害について,現地の状況や1889年水害の状況をごく一部ですが,報告いたしま す.現地調査は奈良県吉野郡天川村(てんかわむら),五條市大塔町(おおと うちょう),吉野郡十津川村(とつかわむら)で行いました.

台風12号によって多くの河道閉塞が発生した奈良県南部の天川村,五條市大塔町,十津川村は,熊野川(新宮川しんぐうがわ)沿いに位置しています.信濃 川が長野県と新潟県で呼称が異なるように,熊野川も市町村ごとに呼称が異なります.天川村では天ノ川(てんのかわ),十津川村では十津川(とつかわ), 五條市では熊野川(くまのがわ)と呼ばれています.本文でも市町村ごとの呼称で表記します.

●天川村坪内地区

坪内(つぼうち)地区は今回の台風12号によって,1km四方の比較的狭い範囲で,同時に三か所の地すべりが発生しました.これにより天ノ川で河道閉塞が 発生し,坪内地区は浸水被害を受けました.地区は平均標高580mから590mで,河床は標高約560m程度です.河床から10m程度高い面に位置する中学校の建物 は1階部分が浸水し,グラウンドは半分程度えぐり取られていました.被害を受けた建物の中では一度土台から建物が浮き上がり,水が引いた後ずれてしま ったものもありました.また,川沿いの建物は地すべりが河道閉塞を発生した際に生じた「津波」で一気に建物が浮き上がり,別の建物の上へ折り重なって しまったという例もあるようです.

また,天河大弁財天の禊社(みそぎしゃ)は坪内谷左岸の地すべりとその後の台風15号によって,1.5mほどの土砂が堆積していました.鳥居は半分ほど埋没 し,横を通る林道のガードレールが土砂の間からわずかに出ていましたが,沢の上にかかる橋も土砂で埋没していました.土砂の断面をみると数回にわたっ て堆積した様子が分かりました.

1889年十津川水害時は計7ヶ所の大規模な地すべりと19ヶ所の河道閉塞が発生しました.その際,天川村塩谷地区と天川塩野地区では地すべりによって天ノ 川に河道閉塞が発生しましたが,今回この付近での大規模な地すべりは発生しませんでした.

●大塔村

大塔村では熊野川沿いの狭い範囲で多くの地すべりが発生しました.辻堂,宇井(うい),大塔村の南部・熊野川右岸へ合流する支流中津川では赤谷と川原 樋(かわらび)の2ヶ所の計4ヶ所で地すべりが発生しました.赤谷は現在でも河道閉塞が継続しています.また川原樋は遠景からの確認となりましたが,現 在では閉塞はしていません.辻堂地区でも裏手の斜面で地すべりが発生しました.

1889年十津川水害時の大塔村は大規模な地すべりが25ヶ所,河道閉塞が5ヶ所で発生しました.川原樋では今回とほぼ同じ箇所で地すべりが発生し,川原樋 新湖とよばれる河道閉塞が発生しました.この河道閉塞は約2週間後の1889年9月7日に決壊しました.また辻堂では地すべりによって避難先であった寺が半 分埋没し,避難していた人々はさらに高台へと避難しました.

十津川村でも多くの場所で斜面変動が発生しました.今回の調査では,長殿谷(ながとのだに),宇宮原(うぐはら),野尻(のじり)の地すべりを訪れました.

○今回の調査写真の一部をGoogle Mapsで掲載しましたので,ご覧ください.
http://maps.google.co.jp/maps?q=http://dil.bosai.go.jp/disaster/2011H23T12/201109H23T12.kml
(クリックして開けない場合,URLをブラウザのアドレスバーに貼り付けてご覧ください)
Google Mapsの表示を航空写真にしていただくと,背景地図が災害後の衛星写真・航空写真に切り替わります.今回の台風で発生した地すべりの様子を見ることができます.
(鈴木比奈子)

【参考文献】

 2011年6月に起きた主な自然災害 & トピック

 図書館探訪―災害資料を訪ねて― (その7)

<名古屋大学災害対策室・減災連携研究センター>

今回は名古屋駅から地下鉄でおよそ30分,名古屋大学東山キャンパス構内にある名古屋大学災害対策室と減災連携研究センターをご紹介します. 名古屋大学は,2001年に大学院環境学研究科が発足して以来10年,一貫して地域防災に積極的に取り組んでいます.災害対策室を見学させていただいたの は2004年,また,減災連携研究センターは2010年12月に開設されたばかりで,公開施設の大震災情報集約拠点(MeDIC)は筆者もまだ未訪問ですが,10月29 日(土)-30日(日)に第13回日本災害情報学会大会が名古屋大学で開催されることもあり,ご紹介します.通常土日は閉室ですが,10月29日(土)11:40 -13:00(同学会大会昼休み時間)に大震災情報集約拠点(MeDIC)の見学ができるそうです.

★名古屋大学災害対策室

学内防災と地域防災力向上のために活動する組織として,2002年10月に設置されました.学生・教職員など2万人を超える名古屋大学で,安心・安全なキャ ンパスの整備と維持にむけた支援や,専門的見地から学内の防災・危機管理体制の充実の方策を立案するとともに,平時の予防活動や発災時の応急活動を支えています.

また,学内防災とともに地域防災も重要な柱として位置付け,地域社会における防災協働体制の構築を目指し活動を続けてきました.現在は主に学内防災を 担う組織として,減災連携研究センターとともに活動しています.

★名古屋大学減災連携研究センター

分野連携により減災戦略モデルを構築し,地域協働により安全安心な社会を実現することをミッションに掲げ,東海,東南海,南海地震や豪雨・台風などの 自然災害による被害を最小限に抑えるために,中京圏の連携による減災プロジェクトを推進しています.

東日本大震災以降,市民むけシンポジウムや専門家の研究会など,多方面の活動を推進しています.またセンター内に東日本大震災の資料・情報を収集す る大震災情報集約拠点(MeDIC)を立ち上げ,一般公開しています.

★施設の紹介

主な施設は東山キャンパスの環境総合館4階にまとまっています.

(1) 地域防災交流ホール
防災関連展示体験と,地域防災交流スペースになっています.展示スペースで は,実際の揺れを体験できる振動台「BiCURI」や,「ぶるるシリーズ」など, 見て触れて体感する防災関連教材・資料をそろえています.

(2) 大震災情報集約拠点(MeDIC)
地域防災交流ホールの中にあり,東日本大震災に関する新聞,雑誌,各種機関 の報道資料,動画や写真など,各種情報を手にとってご覧いただけるよう集め ています.また,近い将来,この地域に起きうる南海トラフの地震に関する 情報や地震に対する備え等についても情報を提供しています.

(3) 災害アーカイブ
地域の災害・防災関連の資料,災害・防災一般,教育用の書籍やビデオなどを 収集しています.防災関連の資料としては,地域で最も充実した内容となるよ う目指しています.

★利用案内
★名古屋大学災害対策室・減災連携研究センター データ
★雑感

名古屋大学では安否確認システム導入,学生向け防災ガイドや学内建築物の耐震性を評価したMAPの作成の活動などを行っているそうです.2万人といえばも う自治体並みです.

災害対策室主催の「防災アカデミー」,減災連携研究センター主催の「げんさいカフェ」といった定例セミナーをはじめとする教育普及活動も活発に行われ, 近くに住んでいたら毎月参加したいです.災害対策室と減災連携研究センターの2枚看板となり,ますますその活動に注目です.
(堀田 弥生)

 学会・イベント情報

◆展示会:『伊能図でみる東日本-東北地方を中心に-』
http://www.chs.nihon-u.ac.jp/museum/exhibition.php?l=1
日時:2011年10月1日-10月30日 10:00-17:00(土曜日10:00-13:00)

◆多角的な災害教訓から静岡の防災を考える
http://www.shizuoka.ac.jp/event/detail.html?CN=836
日時:2011年10月16日,11月05日,11月06日 13:30-16:30

◆地質・地盤リスクマネジメント全国大会 シンポジウム「地盤リスクマネジメントに関するシンポジウム」
http://www.georisk.jp/2011/georisk0809.pdf
日時:2011年10月21日 10:00-11:50

◆2011年東北地方太平洋沖地震はどのような地震だったのか?-これまでにわかったこと,これからの課題-
http://www.sci.tohoku.ac.jp/shien/outreach/?p=2912
日時:2011年10月22日 13:00-16:30

◆中部大学総合工学研究所講演会
「重力で地下を透視する~日本の活断層評価の現状と課題~」
「東北地方太平洋沖地震津波による海岸保全施設の被災から学ぶ」
http://www.chubu.ac.jp/news2/detail-1642.html
日時:2011年10月26日 15:15-17:30

◆防災・日本再生シンポジウム「濃尾地震から120年-その教訓を振り返る-」
http://www.gensai.nagoya-u.ac.jp/top/noubi-sympo.pdf
日時:2011年10月28日 13:00-17:30

◆「東日本大震災を地元メディアはどう伝えたか~来るべき南海トラフ巨大地震に備えて~」
http://www.gensai.nagoya-u.ac.jp/top/saigai-jg-sympo.pdf
日時:2011年10月29日 13:00-15:30

◆中高生へ:『社会との対話と地球との対話』
http://outreach.eri.u-tokyo.ac.jp/student/openlec/shinroshien/
日時:2011年11月6日 14:00-17:00

 新刊情報  最近出版された災害・防災関連図書を紹介します.

★災害が学校を襲うとき ― ある室戸台風の記録
【著者】上村武男
【発行者】創元社(大阪)
【発行年月日】2011年9月21日
【価格】\1,260       【ISBN】9784422932187

★地震の夜にできること。
【著者】松本春野
【発行者】角川書店
【発行年月日】2011年8月30日
【価格】\1,260       【ISBN】9784048742375

★災害ボランティア・ブック―週末は東北へ
【著者】平凡社
【発行者】平凡社
【発行年月日】2011年9月1日
【価格】\997        【ISBN】9784582835397

★Excelで学ぶ地震リスク評価
【著者】日本建築学会
【発行者】技報堂出版
【発行年月日】2011年8月25日
【価格】\2,100       【ISBN】9784765525527

 防災コラム <防災科学の基礎知識>

第二十一回 砂質地盤の液状化

東日本大震災では強い揺れが数分間も続いたこともあって,砂質地盤の液状化 が大規模に発生しました.最も遠いところでは,本震の震央から500km,M7.7 の大きな余震の震央から200km離れた東京湾岸埋立地で生じました.ここの震 度は5弱で,震動の直接作用による建物損壊はほとんど生じていません.霞ヶ 浦と利根川の間の潟起源低湿地,鹿島砂丘の内陸側低地,砂堆列の並走する九 十九里平野などでも大規模な液状化が生じました.

砂は粘着性のない粒の粗い粒子です.締まりがゆるい状態でこの砂が積み重な っているとき,砂粒子はお互いに角を接触させ,いわば突っ張りあって全体を 支えています.粒子間には広い隙間があり,互いにつながっています.地下水 面が高いと,この隙間は水で完全に満たされています.ここに地震動が加わっ て砂粒子が繰り返し揺すられると,お互いの支えがしだいにはずれ,やがては 砂粒子間の接触はなくなり,水圧を高めた水の中にばらばらになって浮いた状 態になります.これが地盤の液状化です.

揺すられることによる全体としての体積の縮小に抵抗して地下水の水圧は高ま ります.圧力を高めた地下水が砂とともに地表へ噴出すると,地層の中身が抜 け出たことになり,沈下・亀裂・陥没・隆起などの地盤変形が起こります.横 からの押さえのないところや傾斜のあるところでは,液状化層が側方へ流動し ます.これにより建物・構造物に沈下・傾斜・転倒・浮き上がりなど,および それに伴う破壊が生じます.水と砂が抜け出すのにはかなりの時間がかかるの で(長いときには数時間),強震動の作用の場合とは異なり,建物の変形・破 壊は比較的ゆっくりと進みます.したがって人の被害はほとんど生じません.

液状化は,締まりの緩い砂質層の存在と地下水による飽和,という2つの条件 の組み合わせがある場所で生じます.主に砂質層で構成され地下水位の高いの は次のような地形です.過去の液状化災害は主としてこのような地形で起こっ ています

◆海岸埋立地:造成されて間もない締まりのゆるい地層であり,海辺にあるので地下水で完全に飽和し,埋め立て材料は海底砂であることが多いので,液 状化が最も起こりやすい人工の地形です.

◆旧河川敷・旧河道:平野中の凹所で地下水位は高く,表層は主として河床砂で構成されているので,液状化が生じやすい地形です.液状化が注目される契 機となった1964年新潟地震では,信濃川旧河川敷で著しい液状化被害が発生しました.

◆砂州・砂丘の内陸側縁辺,砂丘間凹地:砂州・砂丘の内陸側やそれらの間の凹地では地下水面が地表近くにまで達しているので,液状化が生じやすい地形 です.一般に沿岸砂丘の発達する平野では砂質層が多く分布し,また,人工盛土・埋土の材料も砂が使われるので,地震時には広く平野内で液状化が発生し ます.

◆低い自然堤防・緩扇状地・三角州など:自然堤防は砂質層からなるので,その低いものは液状化を起こします.後背低地や旧河道では地下水位が高いの で,砂質のところでは液状化が生ずる危険があります.三角州は河川が土砂を海に搬出してつくった地形で,地下水位は高く,堆積層の締まりは緩いので, 砂質のところでは液状化発生の可能性が大です.勾配数百分の1ぐらいの緩やかな勾配の扇状地は主として中・細粒砂で構成されるので,地下水位の高い放 射状旧流路内や扇端部において液状化の可能性があります.

地震動の主力であるS波は,ずれ変形が伝播していく横波であるので,ずれの力に抵抗できない液体中にはS波は伝わりません.したがって液状化は地震動 を減衰させます.液状化の被害は専ら基礎地盤の変形・破壊によって生じます.

被害を受けやすいのは重量の大きな建築物や構造物であり,液状化砂層中に沈み込んだり,不等沈下により傾斜したりします.地中に埋設された上下水道 管・ガス管・マンホール・タンクなどは,内部を含めた見かけ比重が液状化層の比重よりも小さいので浮き上がります.また,液状化層の側方流動により被 害を受けます.堤防・道路などの盛土は基礎地盤が液状化すると,沈下や滑り出しにより破壊されます.地盤の上に載っているだけの軽量の木造建物に対し ては,液状化の影響は相対的に小さいのですが,亀裂・陥没・隆起などが大規模になるとやはり被害を被ります.基礎地盤が変形を受けているので復旧がより困難です.

液状化防止は,締まりの緩い砂層および地下水飽和という液状化発生条件をなくす地盤改良工事により行なわれます.

◆砂層をなくする:砂よりも細粒で粘着性があるため液状化が生じない粘土・シルト,あるいは粗粒のため排水が速やかに進む礫によって砂層を置き換える 方法で,抜本的な対策ですが高コストです.

◆地下水をなくする:水抜き・脱水・止水などを行って地下水位を下げ,表層部における飽和状態を解消する方法ですが,恒久的に地下水位を下げることは困難です.

◆砂層を固める:締め固め・圧密により砂層の密度を上げて液状化しにくくするもので,最も多く行われている方法です.振動クイの打ち込み,締め固め砂 杭(サンドコンパクションパイル)の圧入などの工法があります.薬液(水ガラスなど)の注入により固化させるという方法もあります.

◆透水性を高める:砕石柱(グラベルドレーン)をつくって排水経路を短縮し,砂層中に発生する過剰間隙水圧を速やかに消散させる方法です.先端を閉じた 鋼管を砂中に貫入し,砂利や砕石を詰め込んだあと鋼管を引き上げるという方法によってつくられます.

◆盛土を行う:表層に厚さ2~3mの非液状化層をつくって,有効垂直応力を増し,また噴水・噴砂を抑えこむもので,一般住宅等の被害防止に役立ちます. 大規模な地盤改良を行なうことができない場合には,コンクリートのべた基礎にして基礎剛性を大きくして地盤変形に対する抵抗力を与えます.
(水谷 武司)

 自然災害情報室からのお知らせ

◆次号,第22号は11月11日(金)発行,第23号は12月8日(木)発行の予定です.第20号に情報・告知等の掲載をご希望される方は,11月4日までにご連絡 くださいますようお願い申し上げます.

編集後記

◆今回は軽量版でお送りしました.先日,急遽台風12号災害の現地調査へ参加したため,特集はお休みさせていただき,写真などを見られるようにしてみま した.いかがでしたでしょうか?写真や1889年水害の記事は今後も加えていきたいと考えております.ご意見・ご感想お待ちしております.

◆いつもご購読ありがとうございます.メールマガジンのご意見・ご感想など 是非< library@bosai.go.jp >までお寄せ下さい.

発行 防災科学技術研究所 自然災害情報室

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★自然災害情報室は災害に関する情報・資料の収集・提供を行っています.災 害に関する資料を作成された場合は寄贈をお願いします.災害資料をお探しの 方はお手伝いができますので気軽にご相談ください.

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