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メールマガジン「自然災害情報の収集・発信の現場から」

メルマガ「自然災害情報の収集・発信の現場から」第18号(2011年07月08日発行)

◆節電の夏,暑い日が続いておりますが皆様いかがお過ごしでしょうか? 人間が我慢できる気温は28℃が限界なのだそうです.作業効率も加味しつつ, 効率よく節電を心がけていきたいものですね.ちなみに担当者は熱中症になり やすいタイプなので毎日ハラハラしております.

◆震災からもうすぐ4カ月が経過しようとしています.メルマガの発行日がく ると,あの時のことをよく思い出します.未だに不自由な生活をされている多 くの方々の生活が一日でも早く復旧できることを願っております.

★このメールマガジンはご自由にご転送ください.災害研究や防災に関心のあ る方々との情報交換の場にしたいと考えております.セミナー・シンポジウム などイベント情報,本や論文の紹介と書評など,読者の皆様に役立つ情報はで きる限り掲載しますので,ぜひ情報をお寄せいただきたいと思います. < library@bosai.go.jp >までお願いします.

CONTENTS

災害発生地の今昔 <三陸沖の過去の地震 1611年 慶長三陸地震>

3月11日に発生した東日本大震災から間もなく4カ月を迎えようとしています. 1000年に一度と言われる地震津波ですが,869年以降も東北地方で津波を伴う 地震は発生しています.そこで今回は慶長三陸地震津波について取り上げてみ ました.

◎慶長三陸地震
  • 地震発生:1611年12月2日(慶長十六年十月二十八日)
  • 推定震源:三陸はるか沖,三陸沿岸および北海道東岸 144.4°E,39.0°N
  • 推定規模:M≒8.1
  • 発生時刻:午前11時前後以降(巳刻以降)
  • 津波:有.大波3回,海鳴り有り. 岩手県田老で推定津波高20m
  • 被害:
    • 陸前高田市(今泉)50人(溺死),伊達政宗領内1783人,南部・津軽人馬3000 余,釜石市鵜住居(うずまい)・大槌町・横沢800人,山田町船越50人,山田20 人,宮古市津軽石150人,相馬領700人,北海道東部にも溺死者多数.
  • 備考:
    • 岩手県陸前高田市,宮古市では家屋一軒も残らず流出,宮城県岩沼,刈田郡に 津波襲来,岩沼辺では家屋流出.仙台市荒浜,三本塚,下飯田新開が荒地化, 新田開発を行う. 相馬中村海岸,北海道東部にも津波襲来.津波の波源は昭和8年三陸地震津波 と一致.阿武隈川に津波が遡上,海岸から7km付近の千貫松まで.根白集落 (旧三陸町・現大船渡市)は高地に集落があったため,津波を免れた.

毎日新聞の2011年4月19日の記事をお読みになった方も多いかと思います.
「東日本大震災:先人は知っていた 「歴史街道」浸水せず」毎日jp
http://mainichi.jp/select/weathernews/20110311/archive/news/2011/04/19/20110419k0000e040095000c.html

この記事では,東北大 平川新教授の調査の結果,仙台平野を縦断する奥州街 道と浜街道の大部分と宿場町がわずかにそれており津波を免れた,とあります. 渡辺(1985)や沢井ほか(2006)によれば,阿武隈川沿いにある千貫山の麓ま で津波で船が運ばれた,とあります.この場所は当時の海岸線から約4km(1 里)の距離にあったそうです.これらの歴史街道がいつ成立したかはわかりま せんが,過去の災害実績をもとに街道を敷設していることは間違いがないよう に感じられます.

この記事の終わりに平川教授が述べていますが,現代日本の自然災害に対する 認識を改めなければならないと改めて感じました.
(鈴木比奈子)

<参考文献>

2011年6月に起きた主な自然災害 & トピック

特集 1911年8月8日稗田山崩れ―資料からみた災害時の状況

◆今回の特集は稗田山崩れを特集します.日本三大崩れの一つとしても挙げら れることの多い稗田山崩れは今年,発生から100年を迎えます.そこで今回は 稗田山崩れについて,資料を交えて当時の災害状況をご紹介いたします.

◇稗田山崩れ
  • 所在地:長野県北安曇郡小谷村南小谷
  • 発生日:1911年8月8日午前2時-3時
  • 発生源:金山沢からサトンボ峰の間部分
  • 規模:横・1km,高さ・河床より300m
  • 被害:24名,石坂下・来馬集落埋没
  • 備考:当日の天候は晴れ,数日前に台風による降雨ありか.

幸田文の「崩れ」にも登場する稗田山は1911年8月8日未明に突如崩壊しました. 特に記録に残っている1911年と1912年の崩落は石坂,長瀬,池原下,下里瀬そ して来馬という集落を土石流や水害で巻き込み,1911年以降4回の崩落とそれ に伴う水害が発生しました.この崩落については当時来馬在住だった住民の子 孫が備忘録としてまとめたり,崩落時に常法寺住職であった松本(1912),来 馬に関連する稗田山崩落をまとめた松本宗順(1946),稗田山崩落を初めて学 会誌に掲載した横山(1912),石坂集落出身でたまたま被害を免れた細野(19 23)など様々な資料が残されています.

○1911年8月8日午前2時-3時頃
稗田山サトンボ峰が崩落し,その崩落土砂は姫川支流の浦川へ流れ込み,約60 0mの谷を埋めました(松本1946).崩落当時の様子を稗田山から12km下流にあ る来馬常法寺の当時住職であった松本順應は以下のように記しています.

「明治四拾四年八月八日(旧七月拾参日)午前弐時頃枕辺の障子非常の音響を 発して鳴動す.雨戸を開き窺ひ見るに微風だになく大災に非ずして牛馬は處々 に囀く.大鐘を打鳴し報ぜんと欲するも何事なるや判明せず.」

流出土砂は谷底に近い石坂下集落を埋没し(横山1912),3戸が消失,17名が 死亡しました(松本1946).石坂下の生存者は約1km登った現在の石坂へ移転し たそうです.石坂へ到達するまでの土砂の速さや被害について横山(1912)は その被害を以下のように記しています.

「蓋し以上の出来事は,咄嗟の間に起りたるを以って,石坂に於ては一人も命 を全ふしたるものなく・・・」

石坂集落を埋没させた流出土砂は浦川をくだり,姫川左岸の合流点にある松ヶ 峰を乗り越え,姫川右岸に位置する穴平・外沢集落の岸壁に衝突しました(横 山1912).土砂は松ヶ峰‐外沢間に約60mの厚さで堆積し,姫川に天然ダムを 形成しました(横山1912).この堰き止めの様子を来馬からみた松本(1912) は以下のように記しています.

「(前略)姫川に一滴の水の流るるなきに驚く.上川原に至り見るに松ヶ峯を 打越へたる土砂縣道に溢れたり.一方姫川は一の大山の如き五拾間余の高き山 に堰き止められしなり.」

流出した土砂は松ヶ峰にダムを形成するとともに長瀬地区を埋没させました. 長瀬では1戸消失し1名生存,6名が死亡しました(横山1912).また長瀬と 浦川河口の間にある橋の袂で材木運搬業者1名が死亡しました(松本1946). 長瀬の様子を横山(1912)は以下のように記しています.

「想像すべからざる多量の土砂石,大河の決するが如く(中略)更に進んで姫 川底に出で,その上流數町の河邊に在りたる一軒家を人と共に壓墜し….」

また横山(1912)は長瀬のただ1人の生存者から聞き取りをしています.

「(前略)深夜啻(ただ)ならぬ音響ありしを以って・・・(中略)・・・三歳の小児 を抱へて戸外に駆け出し,前面の崖に登る間のなく家は潰れたるが再度流れ来 りたる土砂の為に,其の子を奪はれ,自身も亦之に押されて進むこと數町・・・ (後略)」

ダムが形成され堰き止められた姫川は次第に水かさが増していき,池原下集落 の家屋を4戸浸水させ,3日後に減水した際に浸水家屋は揉み潰されてしまい ました(松本1946).池原と同様に浦川との合流点から上流に位置する下里瀬 集落は48戸中43戸が浸水被害に遭いました.

堰き止められた姫川は最高水位に到達し,堰き止め湖は長瀬湖と呼ばれ,国道 及び大糸線も浸水しました(松本1912,松本1946).そのため代替輸送として 長野県は長瀬―下里瀬間で船渡を運行させたようです(松本1946).

○8月12日
上流家屋(池原下・下里瀬)の浸水が深刻なため天然ダムに排水路を開削しま した.開削するために近隣市町村の技術者や警察,消防団が協力したことは松 本(1912)に記されています.

「(前略)・・・又大町警察署長も巡査若干名を随へ應援せり.又縣庁よりは永 坂縣属は渡辺,西村,塩原技師を随へ工区主幹仁科氏も出張し拾七日には右官 吏の監督にて神城(かみしろ)北城(ほくじょう)両村(現在の白馬村)の消 防夫及南小谷村民総出動して姫川を掘割りたり.」

水路が完成し放水を始めましたが水勢が激しく,多量の土砂が来馬河原に流出 しました(松本1946).このときの様子を松本(1912)は以下のように記して います.

「疎水完成するや水は徐々として流出し始めたり.然るに午後拾時頃に至り俄 かに大水となり西山麓川の瀬となり(中略)字堂ハバ際を漲り川田太一郎前を 姫川に出たり.更に翌拾弐日午前弐時頃に至るや川原田地の中心の川瀬となり 西空の弦月之を照らして惨を添ふ.幾多の辛酸を盡して培いし稲は瞬時の後一 葉だに止むるなく狂奔せる水又手を觸るるに由なし.」

水路完成による土砂流出によって,来馬河原が埋没しました.これによって役 場を含む17戸と田畑が被災しました(松本1946).来馬河原から避難したもの は北小谷村役場・北小谷小学校・郵便局・駐在所,住民12戸で(松本1946), そのうち前者は常法寺へ避難し,後者のうち1戸は和平へ移転しました(松本194 6).

来馬河原は当時およそ2段の段丘が形成されており,左岸側を来馬河原と呼び 右岸側を穴平河原と呼んでいました(松本1946).土砂流出後,来馬河原・穴 平河原共に20mほど埋没し(松本1946,小谷民俗誌1979),穴平集落は4戸被災 し,穴平川原は消失し跡形もくなってしまったようです(松本1946).被災直 後に穴平は姫川右岸上部へ移転をしましたが,1戸を残して外沢集落へ移転し たそうです(松本1946).

その後,稗田山は1912年4月26日二回目の崩壊が発生し,来馬集落はさらに被 災しました.その時の様子を松本(1946)は次のように述べています.

「(前略)この時来馬へ打ち寄せた来たものは水の流れではなく、泥と言った 方が適切な真黒な土砂の流れが大きなうねりを立てて津波のように打ち寄せて くる(中略)姫川河原全体の大地がもり上がって動きながらこちらへ迫って来 るような・・・(後略)。」

○1912年5月4日
稗田山3回目の崩落.来馬は土砂災害の被害を受けました.

○1912年7月21日
稗田山4回目の崩落.これによって松ヶ峰-外沢間の天然ダムが決壊し,長瀬 湖は消失,来馬集落は再度洪水被害に見舞われました.

稗田山は1936年にも崩落し,第2期長瀬湖が形成されました. このように多数の土砂災害に見舞われた来馬集落は現在,姫川の左岸の傾斜地に立地しています.温泉もある来馬へはJR北小谷駅から歩いていくことができます. また,来馬集落を中心には金山和尚の伝説とよばれる伝承が残されています. 地元の方は,伝承によって稗田山が崩落しやすい場所ということを伝えてきたことがうかがえます. 2011年8月8日には小谷村で稗田山100周年の記念シンポジウムが開催されるようです. イベント情報に掲載してありますので,そちらも合わせてご覧ください.
(鈴木 比奈子)

<参考文献>
  • 小谷村誌(1995):自然編・社会編 小谷村教育委員会.
  • 小谷民俗誌(1979):小谷村教育委員会.
  • 長野県北安曇教育会(1979):「北安曇郡郷土誌稿(復刻版)」.
  • 細野繁勝(1923):「招魂碑の前に立ちて」,116p.
  • 松本順應(1912):『明治四拾四年至四十五年稗田山大崩壊及それに伴ふ大災害見聞記』
  • 松本宗順(1948):『来馬変遷三十八年史』
  • 横山又次郎(1912):長野県下小谷村山崩視察報告,地学雑誌24:608-620.

読者からの情報提供コーナー

◆1.17防災未来賞「ぼうさい甲子園」の募集について

兵庫県,毎日新聞社,(公財)ひょうご震災記念21世紀研究機構主催により, 1.17防災未来賞「ぼうさい甲子園」を全国からの公募より実施します. 阪神・淡路大震災の経験や,その後の様々な自然災害から得た教訓を生かし, 自然の脅威と生命の尊さや,共生の大切さを考える「防災教育」を推進し,未 来に向け安全で安心な社会をつくるため,児童・生徒等が学校や地域において 主体的に取り組む「防災教育」にかかる先進的な活動を顕彰します. 今年度は,日常の備えとなる学校や地域での取り組みだけでなく,被災地で支 援活動を行っている学生の取り組み等も含め,東日本大震災に関わる活動につ いても募集します.

★事業概要
(1)対象活動内容
学校や地域において,児童・生徒等が主体的に取り組む「防災教育」に関す る先進的な活動
(2)対象部門
①小学校部門,②中学校部門,③高校生部門,④大学生部門
※応募は,学校,クラス,サークル等のグループ単位(他薦も可)
(3)選考
選考委員会で審査,決定
委員長:河田 惠昭(人と防災未来センター長,関西大学教授・学部長)
(4)賞
ア ぼうさい大賞   各部門1点       (賞金20万円)
イ グランプリ    ぼうさい大賞の中から1点(賞金40万円)
ウ 優秀賞      各部門1点
エ 奨励賞      各部門数点
オ だいじょうぶ賞  数点
カ はばタン賞    数点
※ 東日本大震災での活動を対象にした特別賞を選定する場合があります
(5)募集期間
2011年6月17日(金)-9月30日(金)(消印有効)
(6)応募先
〒663-8201 西宮市田代町14-8-105
(特非)さくらネット内 ぼうさい甲子園事務局
電話0798-64-5829 ファックス0798-65-5254
メール bousai_koushien@yahoo.co.jp
<@を半角にしてください>
(7)応募用紙の配布場所
※インターネットでの入手は
http://web.pref.hyogo.lg.jp/pa17/pa17_000000076.html
http://www.mainichi.co.jp/event/edu/bousai/ まで
(8)表彰式・発表会
2011年1月に神戸市内で開催予定

学会・イベント情報

◆第158回 河川文化を語る会「今迫りくる大水害の危機」
http://www.japanriver.or.jp/kataru/kataru_no158.htm
http://www.japanriver.or.jp/kataru/kataru_pdf/kataru_no158.pdf(PDF)
日時:2011年7月11日(月)18:00-20:00

◆東日本大震災を踏まえた今後の帰宅困難者対策【第2回イブニングセミナー】
http://www.mri.co.jp/NEWS/seminar/mri/2011/2029415_1518.html
日時:2011年7月11日(月)18:00-19:30(開場 17:30)

◆立教大学シンポジウム「震災後を語る集い―私たちはいかに報道したか」
http://www.rikkyo.ac.jp/events/2011/07/9192/
http://www.rikkyo.ac.jp/events/_asset/shinsai0711.pdf (pdf)
日時:2011年7月11日(月)18:30-21:00

◆報告会「東日本大震災の復興支援―図書館支援に求められていること―」
http://www.ndl.go.jp/jp/event/events/1191804_1368.html
http://www.ndl.go.jp/jp/event/events/20110713meeting.pdf (pdf)
日時:2011年7月13日(水)13:00-17:00(受付12:30-)

◆「地盤から見た“東日本大震災” 報告会」
 http://wwwsoc.nii.ac.jp/jseg/pdf/110715_zenchiren.pdf
日時:2011年7月15(金) 9:45-17:00 (受付開始9:30)

◆未来エネルギーシンポジウム「東電福島原発事故とその教訓」
http://www.sci.waseda.ac.jp/eq0/gennsiryokusinpojium.pdf
日時:2011年7月15日(金)13:20-18:00

◆防災とリスクマネジメントセミナー
~東日本大震災対応経験をリスクマネジメントの視点から考える~
http://www.jsa.or.jp/standard/meeting_02.asp?fn=risk_m.htm
日時:2011年7月20日(水)13:25-16:45

◆第5回 専門家と共に考える 災害への備え 実践編 ~東日本大震災復興支 援シンポジウム~
http://www.engineer.or.jp/kaiin/gyouji/machizukuri2011.html
日時:2011年7月15日(金) 13:30-18:00

◆リレー講演会「東日本大震災と今後の街づくり」関東大震災から東日本大震災復興の道筋を考える
http://www.metro.tokyo.jp/INET/EVENT/2011/06/21l6n300.htm
日時:2011年7月21日(木)13:00-16:15

◆防災フロンティア研究会 2011年度第1回セミナー-東日本大震災(1):被災状況と対策について-
http://www.ritsumei.jp/research/pdf/20110722bousaichirashi.pdf
日時:2011年7月22日(金) 13:30-17:00

◆第25回 サイエンスカフェ津波の科学-東日本大震災における津波の科学と減災にむけた街づくり-
http://www.klnet.pref.kanagawa.jp/kawasaki/information/science_cafe025.htm
日時:2011年7月22日(金)15:00-17:00

◆特別集会「被災地の博物館に聞く」
http://www.rekihaku.ac.jp/others/assembly.html
日時:2011年7月30日(土)13:00-17:30

◆稗田山崩れ100年‐語り継がれるべき災害の歴史‐シンポジウム
http://www.hrr.mlit.go.jp/matumoto/hiedayama/index.html
http://www.hrr.mlit.go.jp/matumoto/hiedayama/pdf/01about.pdf(pdf)
日時:2011年8月8日(月)13:00-17:00(シンポジウム)
   2011年8月9日(火) 9:00-14:00(現場見学会※)

◆平成23年(2011年)度 第35回横須賀市市民大学 夏期特別講座3 自然災害から命を守るために!
http://www.mmjp.or.jp/shogaigakushu/sub_new/03_daigaku/img/summer2011.pdf
日時:2011年8月23日(火)10:00-12:00

◆第28回歴史地震研究会大会
http://sakuya.ed.shizuoka.ac.jp/rzisin/meeting/28th_taikai_v2.pdf
日時:2011年9月16日-18日

新刊情報  最近出版された災害・防災関連図書を紹介します.

★日本の液状化履歴マップ
【著者】若松加寿江
【発行者】東京大学出版会 【発行年月日】2011年3月
【価格】\21,000      【ISBN】9784130607575

★先送りできない日本 ”第二の焼け跡”からの再出発
【著者】池上彰
【発行者】角川書店    【発行年月日】2011年5月
【価格】\760       【ISBN】9784047102842

★Q&A震災と雇用問題
【著者】野川忍
【発行者】商事法務    【発行年月日】2011年6月
【価格】\1,680      【ISBN】9784785718855

★Q&A東日本大震災と事業継続の法務
【著者】竹内朗
【発行者】商事法務    【発行年月日】2011年5月
【価格】\1,680      【ISBN】9784785718787

★Q&A東日本大震災と登記実務
【著者】鈴木龍介
【発行者】商事法務    【発行年月日】2011年6月
【価格】\1,260      【ISBN】9784785718749

★千年震災
【著者】都司嘉宣
【発行者】ダイヤモンド社 【発行年月日】2011年5月
【価格】\1,680      【ISBN】9784478016114

★地震・津波め、おだづなよ!
【著者】広田和好
【発行者】白順社(ゆうプロジェクト)【発行年月日】2011年4月
【価格】\1,260      【ISBN】9784834401127

★中世災害・戦乱の社会史
【著者】峰岸純夫
【発行者】吉川弘文館   【発行年月日】2011年6月
【価格】\2,415      【ISBN】9784642063722

★3・11その日を忘れない。
【著者】飯沼勇義
【発行者】鳥影社     【発行年月日】2011年6月
【価格】\1,470      【ISBN】9784862653079

防災コラム <防災科学の基礎知識>

第十八回 地震による土砂災害

斜面の構成地層は重力によって斜面傾斜の方向に絶えず引っ張られています. 一方,地層はそれに抵抗する力を働かせて,斜面の変形や移動を抑えます.大 雨や地震動などが作用して,地層内のある面で下に引っ張る力が抵抗する力を 上回ると,この面で地層が断ち切られて上に載る土塊が一体となって滑り落ち ます.これが斜面崩壊です.

斜面の表層土塊を下方に引き落とそうとする力(滑動力)Fは,土塊の質量をm, 重力加速度をg,斜面傾斜角をθとして,F = mg sinθ で表されます.これに 対抗する力(せん断抵抗力)Sは粘着力Cと摩擦力との和であり,摩擦力はすべ り面に垂直に働く土塊の重量成分(垂直応力)σと摩擦係数tanφ(φは内部 摩擦角)との積で示されるので,S = C +σtanφ となります.崩壊(せん断 破壊)は,Fが大きくなる,あるいはSが小さくなり,F>Sの状態になると生じ ます.

地震動が斜面に作用すると,その加速度が重力加速度に加わって,gが大きく なります.また,水平加速度との合成によっていわば鉛直方向が変わり,瞬間 的には斜面傾斜角θが大きくなったような効果を生じます.旧震度で6の下限 にほぼ相当する水平加速度250ガル,垂直加速度100ガルの震動が最も不安定側 に作用した場合には,重力加速度が最大で12%増大(したがって土塊重量もそ れだけ増大)し,斜面傾斜角が最大で 13°大きくなると計算されます.この 結果,斜面土塊に作用する滑動力Fは,平常時に比べ最大で50%ほども増大し ます.地震動が斜面を浮かせて垂直応力σを小さくして,せん断抵抗力を低下 させる効果は,すべり面の両側に同時に地震動は作用するので小さいと考えら れます.

大雨による斜面崩壊の発生では,浸透水の飽和による間隙水圧の発生が垂直応 力を減少させることが,最大要因になっています.崩壊の起こりやすい場所は 地中水あるいは地表水を集めやすい地形のところ(谷型斜面など)です.斜面 傾斜角が25°よりも小さいとほとんど発生しません.崩れやすいのは表土層で す.

地震動のこのような効果から,地震による斜面崩壊は,大雨の場合では安全で ある傾斜角10~25°の緩やかな斜面においても発生します.また,表土層のな い切り立った崖も崩落させます.つまり大雨の場合よりも広い勾配範囲にわた って崩壊が生じます.地震動は側面からの抑えがより小さい地形的突出部(周 りが空気である)で大きくなり,また水を集める条件は関係しないので,尾 根・山稜などでも崩れます.強い雨の後に地震があると,雨水浸透の効果も加 わって谷型斜面でも崩壊が発生します.雨の浸透は表層部に限られるのに対し, 地震動は山体の全体に作用するので,地震による崩壊の規模は大きくなる可能 性があります.崩れた場合,崩壊土の運動には初速が加わり,いわば放り出さ れるような状態になるので,より遠くまで達します.地震時に崩壊を起こさな くても,震動によって山体が脆くなり,その後の大雨で崩れを起こしやすくな ります.

崩壊土砂量が数千万m3以上の規模のものを巨大崩壊あるいは山体崩壊と呼んで います.このような崩壊の大部分は地震が発生誘因となっています.降雨とは 違い地震は山体全体を振動し変形させるので,深いところでせん断破壊が生じ て崩壊が大規模になる可能性があるのです. 巨大崩壊を最も起こしやすいの は, 富士山のような成層火山です.成層火山は溶岩流・火砕流・火山礫など が,安定限界に近い急勾配で山体傾斜の方向に平行に積み重なっているので, 非常に不安定です.中部山岳のように,隆起が激しいため谷が深く削り込んで いる大起伏山地も,急峻化により山体が不安定な状態になっています.

巨大崩壊により生産された大量の土砂・岩屑は,巨大規模の岩屑なだれ(土石 流の一種)となって高速で長距離を流れ下ります.通常規模の斜面崩壊(土砂 量103m3程度)では,崩壊斜面の高さと崩土到達距離との比は0.5以上ですが, 大規模岩屑流では,0.1~0.2にまで小さくなる,すなわち高度差の5~10倍も の長い距離にわたって流動します.岩屑なだれが谷の中を流下する場合,その 厚さは100m以上にも達します.この非常に厚い流動深が大きな駆動力を与え, 粒子同士を激しく衝突させて間隙をつくり,摩擦抵抗を小さくして,大きな流 動性を生み出しているのです.その速度は時速100kmを超えます.

地震による斜面崩壊は発生場所が限定し難いし,大規模になる可能性があり, また,先行する降雨といったような前駆現象がなくて突発的であるので,対応 がきわめて難しい現象です.緊急避難の余地はほとんどありません.危険な場 所はあらかじめ避けておくという対応は自然災害全体に共通する基本的な対応 ですが,地震崩壊の場合にはこの対応しかないということになります.
(水谷 武司)

自然災害情報室からのお知らせ

◆次号,第19号は8月8日(月)発行,第20号は9月7日(水)発行の予定です. 第18号に情報・告知等の掲載をご希望される方は,8月5日までにご連絡 くださいますようお願い申し上げます.

編集後記

◆今回のメールマガジンはいかがでしたでしょうか?特集で取り上げた稗田山 崩れのある長野県小谷(おたり)村は北アルプスの景色や西頸城の山々に囲ま れた素晴らしい景色のところです.地すべりが多く,棚田が発達している地域 でもあるため,地元の方は地盤災害という自然現象をうまく利用して生活され ているなあと感じました.また,防災コラムは土砂災害を取り上げております. 雨や台風の多いこれからの季節に,しっかり頭に入れておきたいものです.

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