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メールマガジン「自然災害情報の収集・発信の現場から」

メルマガ「自然災害情報の収集・発信の現場から」第15号(2011年04月08日発行)

◆2011年3月11日,東日本大震災が発生しました.犠牲になった方のご冥福を お祈りいたします.また,被害にあわれた方へのお見舞いを申し上げます. 茨城県つくば市でも,震度6弱の揺れを観測し,一時,断水している地域もあ りました.自然災害情報室は棚から本などが落下し,電動書架が使用できない 状態ではありますが,幸い室員全員にけがはなく現在,場所を移転して業務中 です.そこで,今回はメルマガのテーマを東日本大震災とし,記事の内容を大 幅に変更しておりますが,ご了承ください.

◆2011年3月9日開催の公開学習会に多くの方が参加してくださいました.お越しいた だき,誠にありがとうございます.また,試験公開したUSTREAMでも多くの方 にご覧いただきました.今後も開催していきますので,よろしくお願いいたし ます.

★このメールマガジンはご自由にご転送ください.災害研究や防災に関心のあ る方々との情報交換の場にしたいと考えております.セミナー・シンポジウム などイベント情報,本や論文の紹介と書評など,読者の皆様に役立つ情報はで きる限り掲載しますので,ぜひ情報をお寄せいただきたいと思います.< libr ary@bosai.go.jp >までお願いします.

★アンケート:当メールマガジンのアンケートにいつもお答えいただき,あり がとうございます.皆さまは,今回の地震をどこで遭遇し,どのような被害を 受けましたか?もしよろしければ,体験をアンケートに記載いただけると幸い です.皆様の体験談・ご意見をお待ちしております.

CONTENTS

災害発生地の今昔 <つくばで体感した震度6弱 東日本大震災>

被災された方々には謹んで,お見舞い申し上げます. 2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震は,つくばにある当研究所で も震度6弱を観測しました.今回は体験談で恐縮ですが,東日本大震災での私 の体験をお伝えします.

地震発生時,私は自然災害情報室の居室で仕事をしていました.その時はたま たま立ちあがって作業をしており,カタカタと音が鳴り始めましたが,つくば は茨城県沖の地震が日常的に発生している地域であるため,あまり気にせずに 仕事を続けていました.

しかし,徐々に揺れが大きくなり,次第に音がガタガタミシミシと変化し,立 っていられなくなりました.何かが落ちる音がしていたと思います.これは大 きい,と思って机の下にもぐった瞬間でしたでしょうか.ドーンっと突き上げ られ,音がしてそれと同時に緊急地震速報が鳴りました.

それから一層揺れが激しくなり,何かが割れる音が遠くからしたことは覚えて いますが,あとはゴゴゴゴゴゴ…という音しか聞こえませんでした.机の下で 座ったのは良かったのですが,横揺れが激しくなり座っていられず,這いつく ばっていました.小学生の頃,関東大震災相当の震度を地震体験車で体験しま したが,まさにあの通りの揺れだと感じました.

揺れている時にはやはり家族のことが一番に思い浮かび,「関東大震災がつい に起こったか?」「家は無事だろうか?」といったことが頭の中を駆け巡りま した.

ようやく揺れが収まって,机の下から出ると机の上のパソコンのモニターは倒 れ,パソコン本体が落下しているものもありました.本は棚から落下していた ものの,居室内の棚は全て固定していたため転倒はありませんでした.足の踏 み場もない状態で,室内から廊下へと出て,研究所内にある屋外グラウンドへ 避難しました.その後も,茨城県沖を震源とする余震では土のグラウンドがぐ にゃぐにゃになってしまったかと錯覚するくらいの揺れを体感しました.

幸い,室員は全員怪我もなく無事でした.また,棚の固定などの耐震対策は 非常に効果的であることが判明しました.つくば市内では,地震後断水や停電 といったことも地域ごとに発生し,私の自宅も断水となり,水が出るという 有り難さを身をもって実感しました.

図書閲覧室では,電動書架の損傷や大型地図架の一部が一部落下するなどの 被害がありました.資料が取り出せず,利用者の皆様には大変ご不便を強いて います.改めて地震の力強さを今回,実感しました.
(鈴木比奈子)

東日本大震災関連サイト

2011年3月11日発生の東北関東太平洋沖地震(東日本大震災)の関連サイトを ご紹介します.全てをご紹介することはできませんが,各サイトにも様々な機 関やサイトへのリンクがあります.

自然災害情報室 地震・津波関連コンテンツ

自然災害情報室のコンテンツから,津波災害に関連するコンテンツをまとめました.

新刊情報  最近出版された災害・防災関連図書を紹介します.

★台風・強風・豪雪・洪水(知ろう!防ごう!自然災害 2)
【監修者】佐藤 隆雄
【発行者】岩崎書店   【発行年月】2011.3.10
【価格】¥3,150 (税込)   【ISBN】9784265033928

★世界の自然災害と取り組み(知ろう!防ごう!自然災害 3)
【監修者】佐藤 隆雄
【発行者】岩崎書店   【発行年月】2011.3.10
【価格】¥3,150 (税込)   【ISBN】9784265033935

★Volcanic Earthquakes and Tremor in Japan【著者】西村 太志, 井口 正人
【発行者】京都大学学術新出版会   【発行年月】2011.3
【価格】¥4,305 (税込)   【ISBN】9784876989799

防災コラム <防災科学の基礎知識>

第十五回 三陸沿岸集落の高地移転

災害危険地からの住居移転は,いわば恒久的な避難であり,人命だけでなく資 産の被害も防ぐ抜本的な防災対策です.しかし,大きな危険が指摘されている 場所でも,さらには,危険地に住んでいて大きな被害を受けた場合でも,移転 にまでは踏み切れないのが現実です.本来,災害高危険地には初めから住まな いという選択が基本であって.住んでしまってからの移転は次善の策に位置づ けられるものです.

三陸海岸は,中世の昔から繰り返し大津波災害を被ってきたという世界で最大 の津波危険地帯ですが,海岸低地から高地への住居移転はなかなか進みません でした.1896年明治三陸津波では死者2.2万人の大被害を受け,三陸の多くの 町村で安全な高地への集落移転が検討されたのですが,実施したのは一部の地 区にすぎませんでした.その理由としては,被災地区の大部分が漁村で海浜か ら離れるのは漁業に不便である,零細漁民が多くて資金的に困難である,地区 民の利害が一致せず合意形成は非常に難しい,移転地の選定・買収に当たり地 主との対立が生ずる,などが挙げられます.また,傾斜地の土地造成は当時の 土木技術の面から制約がありました.このため各戸が任意に行う分散移動が主 として行われました.

結局,大部分の被災集落は原地再建を選択したので危険は解消されず,昭和の 再被災につながりました.少数ながら行われた集落移転の跡地には,移転者の 一部が復帰したり,その分家や他村からの移住者が住みついたりしました.

1933年昭和三陸津波では,明治の貴重な経験を活かして迅速な避難が行われ, 死者数は実質で1/4に低下しました.しかし,建物はもちろん避難できないの で多数の地区が壊滅的な破壊を受け,集落の再建が必要になりました.そこで, 集落の高地移動が主要復興事業の一つに取り上げられ,県はこれを積極的に推 進し,国は国庫補助および低利資金利子補給で支援しました.これにより当初 は岩手・宮城両県で約100の集落が移転のための宅地造成計画をたてました. 適地の条件は,海浜に近いこと,既往津波の最高浸水線以上に位置すること, 海を望み得ること,南面の高地であること,飲料水が容易に得られることなど です.しかし,適地が得難いことに加え,資金調達困難,農地転用上の障害, 地主との対立などの問題があって,結局,98集落が分散あるいは集団で移転し ました.移転総戸数は個別移転を含めておよそ8千戸でした.

危険な海岸低地への居住を制約するために,宮城県は県令により津波罹災地お よび津波罹災の虞れある地域における居住用建物の建築を規制しました.しか し時が経つにつれ,漁業に不便などによる元屋敷への復帰,分家や他地区から の移住者の居住などにより,大部分の地区で元のような家並みが復活しました.

高地移転の経過を代表的な地区についてみてみます.唐丹村本郷は,明治の津 波により,ほぼ全戸が流失・倒潰し地区民の半数以上が亡くなる大被害を受け ました.災害後,わずか4戸が背後の高地に移動し,その他は原地再建しまし た.7年後には野火によりほぼ全戸焼失し,やはり原地に再建しました.昭和 の津波では,流失・倒壊101戸,死者326人の大被害を再度受けたので,集落近 くの谷斜面を切り盛土して階段状に宅地を造成し,101戸全戸が移転しました. 移転跡地は非住家地区とされ,その後復帰者は全くないという数少ない例にな っています.山田町船越,唐桑村大沢,唐桑村只越,大谷村大谷,階上村杉の 下は,明治の津波後に高地へ集団移転した地区ですが,ここではごく少数の原 地復帰者が昭和の津波で被災しただけでした.唐丹村小白浜は一旦高地へ集団 移転したものの山火事に遭ったこともあって大部分が原地復帰し,昭和の津波 では全160戸中98戸が流失・倒潰を受けました.しかし明治の経験を活かして 死者数を7人にとどめました.明治の津波で到達標高が38mという最大高を記録 した綾里村では,数戸が個別に高地移転しただけでした.昭和津波では最大29 mという高い津波に再び襲われて大被害を受けました.この災害後,各地区の 背後斜面に土地造成して計150戸が高地移転しました.山田町田の浜地区は, 明治の津波後,集落高地移転を計画したものの実現せず,昭和津波で再被災し ました.この津波の後に高地移転の実行を決断し,300m離れた谷奥の標高15~ 20mの緩斜面に,長さ500m,幅100mの長方形の整然とした区画の宅地を造成し, 240戸を収容可能にしました.

田老町田老地区は,慶長の大津波で集落全滅,明治三陸津波で流失・全壊家屋 615戸,死者3,765人,昭和三陸津波で流失・全壊家屋358戸,死者792人と,大 被害を被っても高地移転は選択せずにそのつど原地再建を行い,再び被災する ということを繰り返してきました.三陸村崎浜は明治の津波でほぼ全滅したも のの,原地の低地に整然とした区画整理をして復興再建したので,昭和の津波 で再び大きな被害を受けました.

移転を妨げる最大の理由に多額の経済的負担があります.この障害を打開して 移転を促進するために「防災集団移転促進事業」と「がけ地近接危険住宅移転 事業」の制度が国によって運用されています.これは個人の自発的移転に対し 利子補給,跡地買い上げ,移転先用地の整備などを行うものです.急傾斜の崖 地では危険の存在が実感されやすいので,後者の制度による移転戸数は多く, 年平均1千戸程度がこれによる補助を受けて移転しています.補助金の限度額 は1戸当たり800万円程度です.なおこの制度は,住宅・建築物耐震改修等事業 に統合して運用されるようになりました.

個人住宅の安全をはかるための強制的移転制度はありませんが,防災施設の建 設や都市計画事業のために,「土地収用法」により全額の移転補償を行って強 制移転させることは行われています.復旧事業でこの補償を得ることができた か否かで,受ける援助の程度に大きな差が生じているケースがあります.

本来,防災のための移転は,災害を受ける前に行われるべきものです.軽微な 災害を受けたのを契機にして,防災集団移転制度を利用して,いわば災害予防 的に移転を実施した集落は,山地内・小離島・海岸べりなどに孤立している集 落がほとんどで,生活向上も目指して移転に踏み切っています.大きな災害地 では,災害後に巨額の防災工事が行われるので,住民はこれにより安全になる と思うことが,移転をしぶる一つの原因となっています.

特定の場所に限ってみれば,次に災害を被るまでの期間は一般にかなり長いも のです.従って,家を改築する機会を利用して,少しでも危険の小さい場所に 住み替えるという心がけは必要です.高危険地の場合,避難は移転までの過渡 的な手段と考えるべきでしょう.あえて居住を続ける場合は,被る被害をその 土地の利用が与える便益を得る必要コストとして受け入れるという選択をして いることになります.

被災住宅の再建に対する資金援助は,その方法によっては危険除去の自主的努 力を妨げ,被害ポテンシャルを大きくする可能性があります.もし安易な資金 助成が危険な居住を続けさせることにつながるならば,防災目的に反すること にもなりかねません.明らかに防災努力を怠っていたことによる被災に対して の経済支援は,社会的公正の面から問題です.

住宅が全壊などの被害を受けた世帯に対し資金を給付する制度には,1995年兵 庫県南部地震災害を契機に設けられた被災者生活再建支援制度があります.支 給額は,2007年改正により,全壊の場合300万円となっています.使途を定め ない定額渡し切り方式で,住宅本体の建設や購入にも支出できるようになりま した.支給は都道府県が拠出した基金600億円から行い,国は支給する支援金 の1/2に相当する額を補助します.被災者の住まいの確保は災害からの立ち直 りにとって最重要です.制度開始から2008年までの支給実績は17,105世帯に 217億円です.
(水谷 武司)

 自然災害情報室からのお知らせ

◆現在,自然災害情報室では一時的に別室に移転中です.図書閲覧室が利用でき ず,皆さまにはご不便をおかけして,大変申し訳ございません.完全復旧には 時間がかかりそうですが,一日も早く復旧できるよう,一同努力して参ります. 今後ともよろしくお願いいたします.

◆皆さまは,地震をどこで遭遇し,どのような被害を受けましたか?もしよろ しければ,体験をアンケートに記載いただけると幸いです.また現在,青森 県・岩手県・宮城県・福島県の各地方紙を収集・データ整理中です.写真・動 画なども収集しておりますので,防災研究者の方や,自ら撮影された災害写 真・動画をお持ちの方々からのご提供をお待ちしています.

◆次号,第16号は5月11日(水)発行,第17号は6月8日(水)発行の予定です. 第15号に情報・告知等の掲載をご希望される方は,5月6日までにご連絡 くださいますようお願い申し上げます.

編集後記

今回は大幅に紙面を変更してお送りいたしました.次号からは,イベント情報など も復活予定ですので,よろしくお願いします.

★今号のご意見・ご感想を始め,皆様の自然現象,災害の体験談をお聞かせくだ さい.

発行 防災科学技術研究所 自然災害情報室

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